家族になったチンチラとは、できるだけ長く一緒に暮らしたいもの。
チンチラを長生きさせるには、人間と同じように健康に気を配り、怪我や病気を予防してあげることが大切です。
このページではチンチラを長生きさせるためのお世話のコツや健康のために気を付けるべきことを解説します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
長生きのためにはチンチラを知ることから!特徴や平均寿命は?
つぶらな瞳に短い手足、ふわふわの毛、まるでぬいぐるみのように可愛いチンチラ。
その愛らしい姿に加え、ほとんど体臭がないこと、鳴き声が小さいこと、飼育スペースが小さいこともあり、ペットとしての人気が高まっています。
一般社団法人日本チンチラ協会が「輸入動物統計(厚生労働省発表)」をまとめたデータによると、2005年には1,103匹だったチンチラの輸入数が、2020年には12,668匹にまで増えています。
2021年には10,089匹と少し減少しましたが、その人気は安定しているといえます。
*参考サイト
チンチラの特徴
性格は好奇心旺盛で活動的、人にも懐きやすい一方で警戒心が強く、臆病でストレスに弱いという特徴もあります。
野生のチンチラは、南米のアンデス山脈の頂上付近に生息。
そのため寒さや乾燥には強いものの、反対に高温多湿の環境は苦手です。
ペットとして飼われるチンチラの寿命は10~15年程で、中には20年以上生きる長生きのチンチラもいます。
健康なチンチラの入手方法と基本的な飼育方法
チンチラとたくさんの時間を過ごすためには、出会う場所と飼育方法にこだわるのをおすすめします。
健康なチンチラは信頼できるペットショップやブリーダーから購入
チンチラは信頼できるペットショップやブリーダーから購入しましょう。
衛生的な飼育環境、適切な給餌、生後3か月頃まで母チンチラと過ごしている(免疫力を高めるため)かは、チンチラの健康状態や今後の生育にも影響します。
チンチラは毛並みの良さや肉付きにも健康状態が現れるので、しっかりと確認してお迎えする子を選びましょう。
チンチラの飼育方法
運命の子と出会ったら、その子が快適に過ごせる空間を作ってあげましょう。
・ケージを準備する
幅60㎝×奥行き45㎝×高さ68㎝以上の小動物用のケージで、素材は頑丈で通気性の良いスチール製がおすすめ。
網目が大きいとチンチラがすり抜ける、挟まって怪我をするなどの恐れもあるので、網目は3㎝以下(仔チンチラの場合は2㎝以下)を選びましょう。
ケージの中には巣箱(寝床)、エサ入れ、牧草入れ、給水ボトル、かじり木、トイレ用品、砂浴び容器と砂、ステップやステージ、回し車などを設置します。
・室温・湿度を整える
室温を20度前後、湿度を40%以下に保ちます。
・給餌
チモシーなどの牧草をメインに、足りない栄養はペレットを与えて補います。
牧草はチンチラの歯が伸び過ぎるのを防ぐ役割もあるので、1日中食べられるように準備し、古くなったものは取り除きます。
・給水
チンチラがいつでも好きな時に飲めるように新鮮なお水を用意します。
・おやつは与え過ぎない
おやつは週に1回程度を目安に、ドライフルーツやドライベジタブルなど水分量の少ない物を。
あげ過ぎは健康によくありません。
*チンチラに与えてはいけない食べ物*
- 水分の多い生野菜や果物、じゃがいも、ネギ・玉ねぎ・ニンニクなどの野菜
- モモ・サクランボなどのバラ科の果物の種子、アボカドなど
・キャリーケースを用意する
病院へ連れていく時などに必要です。
チンチラの寿命を延ばすための、4つのお世話のコツ
大切なチンチラが元気に過ごせるように、以下の4点を心掛けましょう。
チンチラを診てくれる動物病院があるか確認
受診しやすい距離にチンチラを診てもらえる動物病院があるかを、お迎えする前に必ず確認しておきましょう。
チンチラにストレスを与えない
チンチラは、暑さや湿気に弱いうえに、警戒心も強く、大きな音や臭いにもストレスを感じます。
室温を20度前後、湿度を40%以下に保つのはもちろん、大きな音や臭いの少ない環境を整えましょう。
健康な被毛を保つとともにストレス解消にもなる砂浴びスペースも用意してあげましょう。
「部屋んぽ」環境を整える
運動不足解消やストレス発散のためにも1日1回、30分~1時間程は部屋んぽ(部屋の中を散歩)させてあげましょう。
この時、注意すべきは電気コードや観葉植物など、チンチラにとって危険なものをかじる、プラスチックやビニールなどを誤飲・誤食してしまうことです。柵を設置する、部屋んぽをする室内には危険物を置かないなどの対策が必須です。
日常的にコミュニケーションを取り人に慣れさせる
チンチラの異変にすぐ気付くためには、日頃から触れ合える関係になっていることが望ましいです。
ストレスを与えないよう、最初は優しい声掛け、手渡しでおやつをあげる、そっと撫でる、というように段階を踏んで触れ合えるようにしていきましょう。
長生きのために早期発見!チンチラがかかりやすい病気と予防対策
チンチラがかかりやすい病気を知っておくことも大切です。
夏場にぐったりしているときは「熱中症」を疑って
ぐったりと寝そべり耳の中が赤い、体が熱いといった症状があれば、体を冷やしながらすぐに病院へ連れていきましょう。
暑さに弱いチンチラにとって、熱中症は命の危険がある深刻な病気です。
*熱中症の予防対策*
- ケージは風通しが良く、日光やエアコン・ヒーターの風が直接当たらない場所に置く。
- 室温は20度前後、湿度は40%以下に保つ。
ご飯をあまり食べなくなったなら「不正咬合」かも
チンチラの歯は生涯成長し続けるので、伸びすぎるとエサを上手に食べられなくなり、食欲不振、体重減少、よだれが出る、歯軋りなどの症状が出ます。
不正咬合になったら、病院で伸びすぎた歯を削る処置をしてもらいましょう。
*不正咬合の予防対策*
- 日頃から牧草やかじり木を与え、歯が伸びすぎないようにする。
皮膚の赤み、フケが出ているなら「皮膚疾患」の可能性
皮膚が赤くなる、フケが出ている、脱毛している、などの症状が見られたら病院へ。
中には人にも感染する皮膚疾患もあるので要注意です。
*皮膚疾患の予防対策*
- 免疫力が低下した時に発症しやすいため、快適な環境作りと部屋んぽや砂浴びでストレスを発散させてあげる。
便の量が少ない、水っぽい便は「便秘・下痢」の症状
便の量が少ない便秘の症状なら、食物繊維を多く含むエサを与えることで改善することもあります。
下痢の場合は感染症の可能性もあるので注意が必要です。どちらにしても症状が続くようなら病院を受診しましょう。
*便秘・下痢の予防対策*
- ケージの掃除を欠かさず清潔にし、古くなったり傷んだりしたエサを与えない。
- チンチラの体質にあったペレットを見つける。
いつもよりもおとなしい時は「骨折」していないか確認を
チンチラは骨が細く骨折しやすいです。
いつもなら活動的な時間帯なのにじっとして動かない、歩き方に違和感がある、触れると痛がるような場合は骨折している可能性があるので病院で治療しましょう。
*骨折の予防対策*
- ケージ内は高いところからの落下を防ぐようなレイアウトにする。
- 部屋んぽさせる時は目を離さないなど、落下事故を防ぐ。
チンチラが寿命を迎えた時に悔いを残さないための準備
どれだけ長生きをしたチンチラでも、多くの場合は飼い主様より先に寿命を迎えます。
愛するペットちゃんとの別れについて考えるのは辛いですが、その時になってからでは冷静な判断ができずに後悔するかもしれません。
悔いのないお見送りをするためには?
筆者は幼少期から何匹ものペットちゃんと暮らし、何度も旅立ちを見送ってきましたが、どの子もペット葬儀業者に火葬してもらった後、ペット霊園での永代供養をお願いしています。
ペットちゃんの遺骨を手元に残して供養できることを知ったのは大人になってからで、「知っていたらペットちゃん達を自宅で供養できたのに」と少し残念な気持ちになったのを覚えています。
実際、最近お別れしたペットちゃんの遺骨は手元で供養しようかすごく迷いました。
迷った末「同じ家で過ごした子達が一緒にいられるように」と、今回も火葬後は霊園に納めることにしました。
後悔していた気持ちも、今回しっかりと考えて供養方法を決められたことで救われたように思います。
自治体やペット葬儀業者に火葬を依頼するのか、ペット霊園で弔ってもらうのか、それとも自宅の庭に土葬するのかなど、供養方法の選択肢はたくさんあります。
こちらのコラムで火葬方法の選び方について解説しています。
後悔しないよう、飼い主様にとって最良の方法を今の内から考えておいてくださいね。
まとめ
ぬいぐるみのように可愛くても、チンチラも大切な一つの命です。
「可愛い」という気持ちだけで飼うのではなく「どんなことがあっても責任を持って最期までお世話をする」という覚悟で家族にお迎えしてください。
そのうえで、チンチラにとって快適な飼育環境を作り、異変の際にすぐ対処できれば、平均寿命よりも長く一緒にいられるかもしれません。こちらのコラムで解説していますので、参考にしてください。