大きな耳とつぶらな瞳で動物園の人気者であるフェネックは、お家で飼うこともできます。
しかし、フェネックは診てくれる獣医さんが少なく、ネットでも飼育の情報が少ないなど、飼育が難しい動物です。
そんなフェネックの寿命を伸ばすために必要なことは何なのでしょうか。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
フェネックの寿命は?
フェネックの平均寿命は野生の場合は最大10年、飼育環境なら10~12年程度。犬や猫と同じくらいの寿命です。
長い間家族として一緒に暮らせるペットちゃんです。
フェネックの寿命を伸ばすためには?
大切なフェネックが寿命を全うできるようにするためには、ペットちゃんの住みよい環境を作ってあげることが大切です。
環境
フェネックは夜に激しく動き回るエネルギッシュな一面があります。ケージは大きく、なおかつジャンプできるようにステップがついているものがおすすめです。
また、砂漠出身のフェネックは寒さに弱いです。冬であっても25~28度くらいを目安に室温を調整してください。
適切な予防をする
フェネックはイヌ科なので、犬がかかる狂犬病・ジステンバー・フィラリアなどの病気の予防接種が必要です。
食べてはいけないものは?
フェネックは犬と同じく、チョコレートやネギを食べると中毒症状を起こします。また、人間用の加工食品は基本的に与えないようにしましょう。
フェネックがかかりやすい病気
フェネックが健康に過ごせるようにすることが、寿命を伸ばす一番のポイントです。
耳のトラブル
特徴的な大きな耳には菌が入りやすく、耳漏になるフェネックもいます。
ノミ・ダニ・カビ
犬と違って散歩する必要のないフェネックですが、室内に住むダニに噛まれて皮膚炎を発症することがあります。
良い病院を見つけるのが寿命を伸ばすコツ
筆者の祖母が体調を崩して通院することになった際、ある日突然「病院に行くのが嫌だ」とこぼすようになりました。「お医者さんの言い方がキツい」ことが原因だったそうですが、いわゆるセカンドオピニオンを受けてから病院を変えたところ、祖母も治療に意欲が出てきたようでした。
祖母は今でも元気にしていますが、安心して治療を任せられる医師と出会えたことが良かったのだと思います。
フェネックの場合はお医者さんとの相性は図りにくいですが「フェネックの扱いに慣れていないように見える」「あまり親身になってくれない」など気になる点があれば、別の病院を探してみることが、寿命を伸ばすポイントになることもあります。
フェネックと安心して暮らすためには?
ご家庭での飼育数が少ないフェネックと暮らすことは、飼い主様の毎日に新鮮な驚きを与えてくれるはず。
だからこそ、フェネックが安心して暮らし、寿命を全うできるように環境を整えてあげてください。
理想を押し付けない
フェネックは小柄な体格ですが、鳴き声は大きいと語る飼い主様も多いです。また、フェネックは夜行性のため、夜にケージの中で暴れたり鳴いたりするケースも多いです。
フェネックは犬や猫と例えられることも多いですが、トイレを覚えず、なつくかどうかも個体によって異なります。どのペットを飼う時にも通じることですが、こちらの理想を押し付け過ぎずに多少のことは許してあげられるように家族全員が覚悟し、周囲の人にも迷惑を掛けないように環境を整えてあげることが大切です。
利用できる施設が限られる
フェネックとの暮らしや情報を発信するブログ「きつめのきつね」では、うっかりフェネックの頭をドアで挟んでしまった際の様子を記録に残しています。怪我をしたフェネックを診てくれる動物病院を探して2軒の動物病院に連絡しましたが「フェネックを診られる獣医師がいない」という理由で断られてしまったそうです。
このように、エキゾチックアニマルであるフェネックは、病院やペットホテルなど施設の利用を断られてしまうケースもあります。特に、フェネックが体調を崩している際は一瞬の遅れが大変な事態を招くこともあります。
また、同ブログではフェネックを診てくれる病院が少ない理由として「高額なペットであること(=責任を取れない)」「症例(経験)が少ない」ことが原因にあると考察しています。そのため、いざという時の連絡先を控えておくのはもちろん、第3候補くらいまで、いざという時のために連絡する場所を確認しておきましょう。
※参考サイト
介護
年老いた犬や猫を介護するためのノウハウはネットに多く存在しますが、フェネックの介護となると有効な方法を見つけるのはとても難しいです。
フェネックの飼育歴があるなど、正しい知識を持った人など、困ったときに相談できる人を見つけておくようにすることが大切。身近にいない場合はネットやSNSを活用するのもおすすめです。
フェネックが寿命を迎えたら
フェネックが寿命を迎えたら、これまでの感謝を込めて手厚く葬ってあげましょう。
死後硬直する前に遺体を安置する
動物は死後数時間ほどで死後硬直が始まります。その前に
- 遺体の汚れをふきとり、毛の乱れを整えます
- ペットシーツなどを敷き詰めた棺、もしくは箱を用意
- 遺体を箱に納めて、ドライアイスや保冷剤で冷やしてあげます
- 副葬品やお花で棺を飾る
以上の方法で遺体を安置してあげてください。
安置する姿勢は?
遺体を安置する際は丸くなって眠っている姿勢など、自然で楽そうな形に整えてあげるのがおすすめですが、フェネックの場合は大きな耳が棺にひっかかってしまうことも考えられます。
そのため、棺はペットちゃんの体より少し幅に余裕を持たせたものを選ぶのがおすすめです。
供養方法を考える
遺体の安置が終わったら供養方法を考えます。
フェネックは体長3~40cmと小~中型の犬程度のサイズのため、犬や猫と同じようにペット火葬や埋葬など、ご要望に応じた方法でお見送りできます。
火葬する場合
ペット火葬には「自治体への依頼」「業者への依頼」の2つの選択肢があります。
大まかな違いとして「自治体は安価な代わりにお骨が返ってこず、葬儀を行えない」「業者は人件費分の費用が掛かる代わりに、返骨や葬儀も依頼できる」ことが挙げられます。予算や依頼したい内容に応じて選ぶようにしましょう。
自治体と火葬業者の違いはこちらで紹介していますので、選ぶ際は参考にしてください。
火葬するメリット
火葬してお骨にすることを「あの子がいなくなってしまうのが寂しい」と感じる方もいますが、実際は火葬したことでよりペットちゃんを身近に感じられるようになることも多いです。
火葬したお骨を霊園に埋葬した場合は定期的に会いにいくことができますし、埋葬する予定がない場合はお骨を家で管理したり、分骨してキーホルダーに納骨するなど、お骨にすれば供養の選択肢が広がるのが火葬のメリットです。
埋葬する
お庭や私有地など、ご自身が所有している土地であれば、フェネックの遺体を埋葬することもできます。
埋葬を行う際は害虫や悪臭が発生しないように深く穴を掘る必要があり、土に還るまでの日数を短縮するため、できれば火葬してお骨の状態で埋葬するようにしましょう。
まとめ
フェネックの寿命は10年程度と、犬や猫と同じように長い時間を一緒に過ごせるペットちゃんです。
この長い年月を一緒に過ごしていくために、室温はフェネックが過ごしやすい25~28度、食べてはいけないものを誤食しないように環境を整えてあげて、病気をしないように予防接種をしてあげるなど、快適に生活できるようにしてあげましょう。
また、エキゾチックアニマルであるフェネックは受けたい時に診察を受けられない可能性もあります。近くの病院だけではなく、候補を複数持っておくようにしましょう。