ペットちゃんをお見送りする際の拾骨方法やマナーをしっかりと把握できている方はどのくらいいるでしょうか?
いざとなって慌てないよう、お骨上げ(拾骨)に関するマナーや人間の場合と異なるルールについてご紹介します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
お骨上げができる火葬方法は?
ペットちゃんのお骨上げができる火葬方法は「立ち会い個別火葬」「訪問火葬の立ち会い付きプラン」の2つです。
「個別火葬」「一任個別火葬」などお骨が返ってくる火葬方法もありますが、ご自身の手でお骨上げをしたい場合は、必ず「立ち会いができるか」を確認することに加えて「お骨上げをしたい」とご希望を伝えるようにしましょう。
人間のお骨上げとの違い
人間の場合は葬儀の前に必要な手続きがあり、宗派や地域の風習によってマナーや必要な式典が細かく決まっていますが、ペットちゃんの場合はあまり細かくルールが決まっていないことが多いです。
そのため、ペットちゃんが火葬されてお骨になるまでの期間は人間よりも短いです。
火葬までの時間
人間とペットちゃんの火葬には「火葬を行うまでの時間」と「火葬が終わるまでの時間」に違いがあります。
・火葬を行うまでの時間
人間の場合は火葬を行うまでにお通夜や告別式などの式典があるため、亡くなってからおよそ3~5日ほどで火葬されます。
対して、ペットちゃんの場合は亡くなった当日中に火葬・葬儀を行うこともできます。
・火葬が終わるまでの時間
人間の火葬はおよそ1時間~1時間30分程度で終わり、拾骨作業を加えて2時間ほどで完了となります。
ペットちゃんの場合は種類や体の大きさによって異なり、小動物は30分、中型犬なら1時間30分ほどで火葬が完了します。
また、どちらの場合も火葬炉の冷却時間が必要なため、季節や混雑状況によって火葬時間は異なります。
火葬後の手続き
人間の場合は死亡診断書を受け取った後、死亡届を提出して火葬許可証を発行してもらい、その後火葬の手続きを行います。
ペットちゃんの場合は火葬に関して必要な手続きはありません。そのまま火葬できますが、犬の場合は死亡届を提出する必要があり、保険に加入していた場合は解約する必要があるなど、火葬後にしなければいけない手続きはいくつかあります。
ペットちゃんの死亡後に必要な手続きについては以下のコラムで紹介しています。
ぜひ参考にしてください。
ペットちゃんのお骨上げの作法
ペットちゃんをお骨上げする際は、人間とは作法やマナーが異なります。
ペットちゃんのお骨上げの方法
人間のお骨上げと異なるポイントとして「箸渡しを行わない」「火葬炉から直接拾う場合がある」ことの2点です。
・箸渡しを行わない
ペットちゃんのお骨は人間のものより脆いため、箸渡しをせずに直接骨壺に納めるケースも多いです。
・火葬炉から直接拾う場合がある
ペット霊園で火葬した場合は収骨室がある場合もありますが、訪問火葬の場合は、火葬炉から直接拾骨することもあります。
お骨上げの順番
人間の場合は足の骨を骨壺の一番下に納め、体を登るように順番にお骨を拾っていき、最後に頭蓋骨、喉仏を納めます。
ペットちゃんの場合は最初に納める骨が火葬社や飼い主様の考えによって異なり、足の場合もあれば尾てい骨(仙骨)が一番の場合もあります。それ以降は人間と同じく体を登っていき、頭蓋骨・喉仏の順番で納骨する場合が多いようです。
・骨壺の中のペットちゃんの姿
筆者がまだ小さい頃に亡くなった祖父の拾骨に立ち会った際、斎場の方が納骨の順番を説明した後に「拾骨の順番が決まっている理由は生きている時と同じ姿勢にするため」「だからおじいちゃんは骨壺の中で座っている」と話してくれました。
「おじいちゃんはいなくなった」と思って悲しく感じていた筆者でしたが、この話を聞いて少し悲しみが和らいだのを覚えています。そこに居ることをイメージできたからでしょうか。
ペットちゃんに当てはめて足の場合は骨壺の中で立っていて、尾てい骨の場合は「おすわり」していると考えると、悲しい気持ちが和らいできませんか?
ペットちゃんをお骨上げする際のマナー
ペットちゃんのお骨上げを行う際に守るべきマナーはあるのでしょうか。
お骨上げの立ち位置と順番
人間の場合はお骨の拾い方や順番、喪主の立ち位置などがきちんと決まっていますが、ペットちゃんの場合は火葬車から直接お骨上げをすることもあるため、厳密に立ち位置や順番は決まっていません。
ご希望やお骨上げを行う状況にあわせてその場で決めると良いでしょう。
お骨上げの際に用意するもの
お骨上げに使う箸は業者で用意してもらえるため、基本的にはお骨上げのために用意するものはありません。
ただ、感情が溢れてしまった時のためにハンカチ・ティッシュは必ず持っておくようにしましょう。
わからなければスタッフに
ライフエンディングのトータルサポートを提供する、燦ホールディングス株式会社が喪主または葬儀を行った経験がある方を対象に行った「ライフエンディングに関する意識調査」では「葬儀に関しての相談先をお聞かせください」という質問に対して「葬儀社」と答えた方が最も多い割合となっていました。
これは人間の葬儀を行う際のアンケートではありますが、明確なルールが決まっておらず、多くの場合は周囲に経験者がいない場合が多いペットちゃんの葬儀を行う際にも、多くの現場に立ち会ってきたスタッフさんに助言をしてもらうのはとても有効な選択肢です。
「失礼な態度を取ったらペットちゃんにも恥をかかせてしまう…」「大切な存在だからこそ、きちんとした方法で見送りたい」と思う場合は、立ち会ってくれるスタッフさんにどうするべきか相談してみてはいかがでしょうか。
※参考サイト
「ライフエンディングに関する意識調査」燦ホールディングス株式会社
お骨上げを行う際の注意点
ペットちゃんのお見送りが良い思い出として残るように、お骨上げを行う際は以下の3点に注意しましょう。
やけどに注意
訪問火葬を利用する場合は火葬炉から直接お骨上げを行うこともありますが、当然ながら火葬炉は高温になっているので、火葬台の網や周りの金属部分に触らないように注意が必要です。
骨は慎重に扱う
ペットちゃんのお骨は人間よりずっと脆いため、持ち上げる際にうっかり力を入れすぎないように注意しましょう。
待機時間の過ごし方
火葬が終わるまでは待機時間となります。ペット霊園での火葬の場合はロビーや別室で待たせてもらえる場合もありますが、訪問火葬の場合は一度家に帰って待つこともできます。
また、ペットちゃんの旅立ちを最後までそばで見送りたいという場合は、暑さや寒さ対策をしてご自身の体調にも注意するようにしてください。
まとめ
ペットちゃんのお骨上げは人間ほど詳しくルールやマナーが決まっていないので、混乱することもあるかもしれません。
正式に決まっていないからこそ、作法に縛られずに大切な家族を見送ることができる、とも考えられますが、気になる場合はスタッフに質問したり、人間と同じルールで進めたりと臨機応変に作業を進められるようにしましょう。