「亀は万年」と言われるほどに長寿の象徴として知られる亀ですが、実際の寿命は長くて100年程度です。
ペットとして飼育している亀も大切に世話をすれば長い間一緒に暮らすことができます。
今回は亀の寿命と長生きの理由、愛する亀の寿命を伸ばすために必要なことを紹介します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
亀の平均寿命は?
飼育されている亀の平均寿命は約3~40年程度です。ペットとして人気のアカミミガメやクサガメ、ヘルマンリクガメは30年程度、飼育環境によっては50年ほど生きる種類もいます。
亀の寿命が長い理由
生物学では生き物は生涯の心拍数があらかじめ決まっている、という説があり、生き物の心拍数と寿命には密接な関係があると考えられています。
大まかに説明すると、心拍数が多い生き物は寿命が短くなり、少ない生き物は寿命が長くなるというわけです。
亀は呼吸数や心拍数がとても少ないうえに、変温動物のため体温維持のためにエネルギーを費やすこともありません。
これが亀が長生きする秘密のひとつです。
亀は生きるためにエネルギーを費やさない
生物が呼吸や食事によって酸素や栄養を取り込んで、生きていくためにエネルギーを生み出すことを代謝と言います。
生物にとって代謝は欠かせませんが、使われずに余った酸素や偏った食事は細胞へのダメージや老化につながる活性酸素を生み出す原因となって、寿命を縮める原因となります。
しかし、亀は代謝が低いうえに、冬眠によって心臓の鼓動と呼吸を最小限に抑えることもできます。
亀は老化や病気の原因を避け、生きるために消費するエネルギーを最小限にして生活することで見た目通りにマイペースかつ、のんびりとしたスピードで生きているという訳です。
亀を長生きさせる方法
亀は非常に長生きする生き物ですが、ペットとして飼育する場合は飼い主様の手で亀が生活しやすい環境をきちんと整えてあげる必要があります。
適切な飼育環境を整える
クサガメのような水生の亀であっても水中だけではなく甲羅干しができる場所も作ってあげるなど、生態にあわせた最適な環境を整えてあげることが大切です。
また、変温動物の亀は適切な温度管理が欠かせません。水槽の置き場所を工夫したり、必要な場合はヒーターなども使用して快適に過ごせるようにしてあげましょう。
ストレスを与えない
無理なスキンシップや尻尾や手足を無理やり掴むなど亀が嫌がることをすると、亀にとって大きなストレスになるうえ、亀が怪我をする原因にもつながります。
長生きしてもらうためにも、ストレスを与えるようにしないことは重要です。
亀がかかりやすい病気
亀の寿命を伸ばすためには、健康に過ごしてもらうことが第一です。
そのために亀の種類に応じてかかりやすい病気を把握しておき、対処方法を知っておくことが大切です。
卵詰まり
飼育環境などが原因で亀がストレスを抱えると、卵がお腹に詰まることがあります。
この状態を卵詰まりと言い、亀の食欲が落ちたり元気を失ったりする様子が見られるようになります。
放っておくと周囲の臓器を圧迫し、命に危険が及ぶ可能性があります。
そのため、早めに獣医さんに診察してもらうようにしましょう。
水カビ病
主に水中で暮らす亀がかかる病気で、皮膚や甲羅に白っぽいモヤのようなカビが生えてしまいます。水質の悪化や日光浴不足などが原因で亀の免疫力が下がった場合に症状が発生します。
予防のために水槽の中をきれいに保って、水温を25度以上に上げることでカビの原因菌を殺菌することに加えて、患部が広い場合は獣医さんに診てもらってください。
不正咬合
主にリクガメに多い症状ですが、クチバシが伸び過ぎたり、割れて変形し噛み合わせがズレると不正咬合になります。
亀はクチバシでエサをちぎって食べるため、食事を取りづらくなって少しずつ弱っていきます。早めの治療が大切です。
対策としては動物病院で余分なクチバシをトリミングしてもらうことや、日頃からイカの甲羅や小松菜の茎のような固いエサを与えることでクチバシを削っておくことが挙げられます。
熱中症
変温動物である亀は体温調節ができないため、長い間暑い場所で過ごしていると熱中症になってしまいます。
猛暑日は外に出さないことや、水槽用のクーラーを取り付けるなど、適温を保てるように工夫することが対策になりますが、万が一亀に熱中症の症状が出た場合は常温の水で体を少しずつ冷ましてあげて、獣医さんに診察してもらってください。
亀が寿命を迎えたら
亀が寿命を迎えて亡くなってしまった場合は、きちんと供養してあげましょう。
大切な亀に感謝と愛を伝えられるように、ご自身にあった方法を選ぶことが大切です。
土葬
お庭など所有している土地、もしくは許可を受けた場所に穴を掘り、遺体を埋めてあげる供養方法です。
筆者は子供のころ捕まえてきたイシガメが亡くなった際に自宅の庭に埋めて供養してあげました。それからおよそ10数年が過ぎましたが、今でも埋めた場所の近くを通ると亀のことを思い出します。
このように亡くなった後もその子を身近に感じられる供養方法のため、お庭など埋められる場所があり、一緒に暮らした思い出を大切にしたい方におすすめしたい方法です。
しかし、土葬を行う際は臭いや害虫の発生などを防ぐために穴を深く掘ることや、外来種や感染症で亡くなった疑いがある亀の場合は環境保全のために別の方法で供養してあげるなど、亀の種類や状態をよく見て判断してあげてください。
火葬
固い甲羅と爪を持った亀も、専門のペット火葬業者に依頼すればきちんと火葬してあげることができます。
残ったお骨は霊園への埋葬やお家での手元供養など、要望にあわせた供養が行えるメリットがあります。
亀は長生きでずっと一緒に暮らせるペットだからこそ、最後までしっかりと見送ってあげてください。
やってはいけない供養方法
たくさんの思い出をくれた亀をしっかりとお見送りしてあげたいと思うのは当然ですが、周囲の人に迷惑を掛けないか、何より法令違反になっていないかどうかも確認する必要があります。
法令違反
動物の遺体は法律上、廃棄物として扱われます。
そのため、他人の敷地や公共の場で土葬を行うことは不法投棄として法令違反となります。
また、自宅で自己判断での火葬を行うことも廃棄物処理法の「第四章 雑則」のうち、第十六条の二「何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない」に抵触します。
愛するペットちゃんを後悔なく見送ってあげるためにも、正しい方法で供養してあげましょう。
*参考サイト
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
水葬
亀を自然に還してあげるために、遺体を川や池に流すことも不法投棄として法令違反です。
また、飼育されていた亀の病原菌が生態系に悪影響を与える可能性があるため勝手に水葬を行うこともやめましょう。
関連して「可愛そうだから」「自然に返してあげたい」と飼育中に弱った亀を逃がすことも厳禁です。動物愛護管理法の「虐待や遺棄の禁止」に抵触し、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
なにより、せっかく家族として迎え入れたのですから、最後までしっかりと世話をしてあげてください。
*参考サイト
「動物愛護管理法 虐待や遺棄の禁止」環境省
後悔するお別れ
自治体によりますが、体が小さい亀は見えないように包んだうえで生ゴミとして出すこともできます。
お金も掛からず、所定の場所に出すだけでお別れできますが、ずっと一緒に過ごしてきた家族をゴミとして捨ててしまうことは、今は良くても後から後悔することになるかもしれません。
最後のお別れだからこそ、家族で話し合ったり他の人がどのようにお別れをしたのかネットで調べたりと後悔がない方法を選べるようにしてください。
大切な亀の供養方法について考えたい場合は、こちらのコラムを参考にしてはいかがでしょうか。
まとめ
飼育されている亀の平均寿命は約3~40年。長い時間を一緒に過ごせるからこそ、病気や飼育環境に注意して健康に過ごしてもらいたいものです。
亀の中にもリクガメや水生の亀など生活環境によって注意すべき病気や怪我が異なるため、まずは飼育している亀の生態を知り、必要な場合は獣医さんのような専門家に質問することが大切です。