真ん丸な体につぶらな瞳で、成長しても大きくなりすぎず鳴くことの少ないモルモットは、集合住宅でも飼いやすいことからペットとして迎え入れることを検討される方が多くいらっしゃいます。
当コラムではモルモットを迎える前に知っておきたいモルモットの寿命や、一日でも長く一緒にいるためのポイントをご紹介します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
モルモットの寿命
モルモットに限らず、どの種類のペットちゃんを迎える場合でも最初に考えたいのは寿命です。何年生きられるかどうかを把握し、きちんと最期までお世話ができるかを考えてからお迎えしましょう。
モルモットの寿命はおよそ5~8年で、小動物の中では比較的長く生きることができる種類です。また、適切な飼育環境で上手に飼えば10年以上生きることもあるそうです。ちなみにギネスによると14歳10か月と半月も生きたご長寿モルモットがいたという記録が残っています。
モルモットは、生後2か月もすれば繁殖ができるようになるくらい子供の頃の成長スピードが早く、大人になってからは少しずつ老いのスピードが落ち着きます。
次の章から、大切な家族であるモルモットに健康で長生きしてもらうために知っておきたいことをご紹介します。
よくある病気やトラブル
モルモットは生きていますので、当然病気にかかったり体調を崩してしまうことがあります。防げたはずの病気や不調が原因で寿命が縮んでしまうのはとても悲しいことですよね。この章では、モルモットの病気やよくあるトラブルについてご紹介します。
不正咬合
前歯や奥歯の噛み合わせが悪くなる病気で、歯が伸び続けるげっ歯類に起こりやすい歯のトラブルです。嚙み合わせが悪くなることで口内が傷ついたり、食事が困難になることから食欲不振が起こり、悪化すると目や頬、顎に悪影響を及ぼすことがあります。深刻な状況になる前に病院で歯を切ってもらいましょう。
不正咬合を予防するには、繊維質の多い牧草を与えて歯を適度に摩耗させるのが効果的です。
結石症
排尿をするための尿道や膀胱といった器官に結石ができ、排尿が難しくなる病気です。頻尿や血尿、排尿の際に悲鳴をあげる様子があればすぐに診察を受けてください。結石は自然排出が難しい場合が多いため、手術で除去するケースがほとんどです。
カルシウム含有量の少ない食事を与え、水分補給を促すことが主な予防方法です。
乳腺腫瘍(乳がん)
モルモットの場合メスよりもオスに多くできやすい腫瘍で、悪性のものは乳がんです。がんが転移する前に摘出手術を行うことで完治できるケースもあるので、乳腺のしこり、腫れ、出血に気づいたらすぐに病院で検査をしてもらいましょう。良性腫瘍であっても取り除くことが推奨されています。
ビタミンC欠乏症
体内のビタミンCが不足することで発症する病気です。症状は食欲がなくなる、毛艶が悪くなる、元気が無くなるなどで、放っておくとどんどん体力が奪われ、不正咬合など他の病気にかかりやすくなり寿命を縮めてしまいます。特に大人になるまでの成長期間や妊娠中のモルモットは栄養が必要な分、ビタミンC欠乏症を起こしやすいです。
モルモットは体内でビタミンCを生成できないため、生野菜やサプリメントで適切な量のビタミンCを与えて対策をしましょう。
胃腸のうっ滞
消化器官のトラブルで、草食動物によく見られる病気です。ストレス、口腔トラブル、食事の偏りが主な原因で、対処しなければどんどん元気を失い消化器官の動きも更に悪くなります。具合が悪そうな様子があれば早めに病院で相談し、原因を調べましょう。
皮膚糸状菌症
菌によって起こる皮膚の病気で、症状としては脱毛、かゆみ、フケがみられます。不衛生な飼育環境や、モルモットの免疫力が低下している時に起こりやすくなります。
モルモットは排泄の回数が多いためケージ内の床材は週1回は交換し、ケージや小屋も定期的に洗浄してください。また、人に感染することもありますのでケージを置いている部屋も念入りに掃除をして清潔な環境を保つようにしましょう。
不調のサインを見逃さない
2章ではモルモットの病気をご紹介しましたが、いずれの症状も早期発見・早期治療がモルモットの寿命を縮めないために重要だということがわかりました。不調を早期に発見するために、日頃のお世話で健康管理を習慣づけることが大切です。
体重測定
体重測定はモルモットの健康状態を知るために必要不可欠です。体重の減少が著しい場合、消化器官のトラブルや食欲不振を起こしているかもしれません。
体重測定には調理用のはかりを使うのがおすすめです。2kgまで測定できるもので、週1回程度の頻度で行うと変化がわかりやすくなります。
ただし体重測定を嫌がる場合はストレスになるため、月1回程度の測定から始めてみましょう。
排泄物
健康管理において排泄物のチェックは欠かせません。いつもより量が少なかったり、便秘気味、血が混じっているなどひと目で健康状態がわかります。
病院へ連れていく際は排泄物の写真や一部が付着した新聞紙があると診断がしやすくなります。
歯
不正咬合が無いかをチェックします。前歯と、できれば奥歯も見て伸びすぎていないかと、口内に傷がないかを見てあげましょう。
飼育環境を整える
必要なケアが完璧にできていても、肝心の住環境が悪いと臆病で繊細なモルモットにとって大きなストレスとなります。ストレスから体調を崩し、病気になってしまうためストレスの無い住環境は寿命を全うするのに必要不可欠です。
適切な温度
モルモットは基本的に寒さに強く暑さに弱いので、夏の暑さ対策はきちんと行うようにしましょう。
ケージ内が温度は20~26℃、湿度は40~60%をキープできるようにクーラーなどを使って調節してください。
ストレスを減らす
小動物であるモルモットは野生の世界では捕食される側なので、警戒心が強く臆病な面を持ちます。そのため、屋外の騒音や揺れ、過剰なスキンシップなどが大きなストレスになります。ケージを置く場所は道路に面している場所を避けてあげましょう。
また、ケージ内にはモルモットが隠れて落ち着くことができる隠れ家を必ず設置してあげてください。お迎えしたての頃も人に対して警戒していますので、ケージに目隠しの布をかけてあげるとストレスが少なくなります。
栄養バランス
2章で解説した通り、モルモットは体内でビタミンCを生成することができません。そのため、ビタミンCを補うような栄養バランスを意識し、尚且つ不正咬合を予防するため牧草をしっかりと与えましょう。ペレットや果物は長生きしてほしいなら与えすぎないようにしてください。
爪切りとブラッシング
爪が伸びすぎている場合は爪を切ります。爪の先端のみを切り、爪の中は血管を切らないように気を付けます。不安な場合は病院でケアしてもらいましょう。
また、ブラッシングを行い被毛や皮膚の様子を観察しながらスキンシップをとるのもおすすめです。
寿命を全うするまで万全のケアを
ここまでモルモットの寿命を短くしてしまわないためのポイントをご紹介してきました。
モルモットは少しくらい具合が悪くても、元気なふりをして過ごします。これは野生の頃の名残で、弱っている素振りを見せると敵に襲われるという本能が働くからです。
そのため、モルモットを迎え入れる場合は定期的な健康チェックやケアを難しい、面倒だと思わずに継続し、寿命を全うするまでの間は責任を持ってお世話をしてあげてください。
そうすることでモルモットも飼い主様のことが大好きになり、様々な表情を見せてくれるようになります。
まとめ
モルモットのかかりやすい病気や適切な飼育環境を知ることで大切なモルモットの寿命を延ばし、一緒に過ごす時間を増やすことができます。
何か少しでも参考になりますと幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。