
飼い主様が愛するペットちゃんと少しでも長く一緒にいたいと思うは当然のことですし、いつの日かやってくる大切なハリネズミちゃんとの別れに不安に感じる方も多いでしょう。
しかし、いざという時の対処方法がわかれば、その不安も少しは和らぐはずです。
ハリネズミが亡くなる前の症状を知っていれば心の準備もできますし、迅速な治療ができれば命も助けられるかもしれません。
ハリネズミの死期が近づいているサインは以下の6つです。
・亡くなる数日前から徐々にエサを食べなくなり急激に痩せる
・睡眠時間が増えて一日中眠っているような状態になる
・意識がもうろうとして目が虚ろになる
・呼吸が不規則になり、だんだんと弱くなってくる
・体温が低下して手足から冷たくなってくる
・けいれんを起こす子もいる
当記事ではこれらを踏まえて、ハリネズミのシニア期の見守り方、仮死状態と死亡の見分け方、かかりやすい病気や対策などをわかりやすく解説します。
大切なハリネズミちゃんに健康で長生きしてほしい、いざという時の対処法が知りたいという飼い主様はぜひ参考にしてください。

この記事の監修者
高間 健太郎(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
ハリネズミが亡くなる前の症状と快適な老後のための備え

ハリネズミが亡くなる直前には「意識がもうろうとする」「呼吸が弱くなる」「体温が低下する」などの症状が見られます。
この章では、これら症状についてと、シニア期以降を快適に過ごしてもらうための準備をご紹介します。
ハリネズミが亡くなる前の症状
ハリネズミが亡くなる直前には以下のような症状が見られます。
・亡くなる数日前から徐々にエサを食べなくなり急激に痩せる
・睡眠時間が増えて一日中眠っているような状態になる
・意識がもうろうとして目が虚ろになる
・呼吸が不規則になり、だんだんと弱くなってくる
・体温が低下して手足から冷たくなってくる
・けいれんを起こす子もいる
ハリネズミも人間も、亡くなる前に見られる症状はよく似ています。
このような様子を見かけるようになったら、別れの時が近づいているのだと心構えをしておきましょう。
シニア期のハリネズミが快適に過ごせるための準備
ハリネズミも人間と同様に、高齢になれば筋力や内臓機能が衰えてきます。
そのため、若い頃と比べると、食が細くなり、運動量も減少し、睡眠時間も長くなるのです。
外見からでは老化していることはわかりにくいですが、ハリネズミの3歳は人間でいう54歳に相当しシニア期に入ります。
この3歳という年齢を目途に飼育環境の見直しを行うと良いでしょう。
| ハリネズミの年齢 | 人間年齢に換算(概算) | 
| 1歳 | 18歳 | 
| 2歳 | 36歳 | 
| 3歳 | 54歳 | 
| 4歳 | 72歳 | 
| 5歳 | 90歳 | 
ハリネズミちゃんの快適なシニア期ライフのために、ケージ内のバリアフリー化や食事内容の見直しをしましょう。
●ケージ内の環境とエサの見直し
| 見直すこと | 検討内容 | 
| 回し車 | 筋力を衰えさせないために使用する場合はそのままでOK すでに足腰が弱くて動き回るのが辛そうであれば事故を防ぐために撤去する | 
| 砂場 | 中には砂を食べる、砂で眼球を傷付けてしまう子がいる 呼吸器系疾患の可能性も示唆されているため、体調によっては撤去する | 
| バリアフリー化 | 障害物や段差になるものを減らし動き回りやすい環境にする | 
| 床材 | 衛生的に保つためペットシーツにするのがおすすめ ペットシーツの下に段ボールやタオルを敷くなどして床からの冷えを防ぐ | 
| エサ | 歯が抜けて硬いフードが食べられなくなることがあるため、柔らかくふやかしたフードに変更する | 
ヨツユビハリネズミ(ピグミーヘッジホッグ)は夏眠する!仮死状態と死亡の見分け方

ハリネズミには、冬眠する種類としない種類がいます。
現在、日本で飼育・販売が許可されているハリネズミはヨツユビハリネズミ(ピグミーヘッジホッグ)のみです。
このハリネズミは冬眠しませんが、生息地がアフリカのサバンナであり、過酷な暑さに対応するため夏眠する性質があります。
ケージ内の温度が30度以上になると夏眠して仮死状態になることがあり、これを死亡していると勘違いしてしまわないよう気を付けなくてはいけません。
仮死状態(夏眠)と死亡時の見分け方
ヨツユビハリネズミ(ピグミーヘッジホッグ)は食べ物が少なくなる乾季を乗り切る対策として夏眠します。
平常時と比べて呼吸数・心拍数をかなり少なくすることで体を省エネ状態にするのです。
●仮死状態と死亡の見分け方
①涼しい部屋に移動させ体の状態を確認する
まずは、ハリネズミを涼しい部屋に連れていきましょう。
ハリネズミは体が小さいので、亡くなったらすぐに死後硬直が始まります。
手足が硬直していないか、曲げ伸ばしができるかを確認しましょう。

加えて、お腹を触ってみて柔らかい弾力があれば仮死状態の可能性が高いです。
②ひげの反応を見る
ひげにそっと触ってみて、わずかな反応でもあれば、生きていることがわかります。

③呼吸数を確認する
通常時の呼吸数は25~50回/分ですが、仮死状態では呼吸数が数回/分ほどになります。
約1分間ハリネズミをじっと観察して、お腹が動くかを確認しましょう。

仮死状態(夏眠)の場合すぐに動物病院を受診するのが安心
仮死状態になると体温はかなり低下するものですが、夏眠の場合は外気温に影響され高くなることも考えられます。
体温が極端に低下する冬眠の場合なら、ゆっくりと体をあたためることで目覚めさせることができるようです。
しかし、夏眠の場合は体をあたためるべきか冷やすべきかの判断が難しいため、すぐに動物病院を受診するのが賢明です。
体温が極端に高いなら、熱中症の可能性もあるため応急処置として体を冷やしながら病院へ行きましょう。
濡らして冷やしたタオルなどをビニール袋に入れ、それで体を包むように冷やします。
急激な温度変化はハリネズミにとって負担になるので、必ずゆっくりを心掛けてください。
目が覚めたとしても油断せず、はちみつを溶かした水を与えてエネルギー補給を行い、獣医師に診せましょう。
夏眠はハリネズミの体に多大な負担をかけることになり、最悪の場合そのまま死んでしまうこともあります。
そもそも夏眠させないように、ケージ内は適切な温度・湿度を保ちましょう。
熱中症や低体温症の可能性もある
夏場には、夏眠ではなく熱中症になるケースもあります。
熱中症の場合、体温の上昇とともに呼吸が荒くなりヨダレが出て、酷い場合にはけいれんを起こして死に至ることもあります。
冷やした濡れタオルをビニール袋に入れ、それをハリネズミの体に当ててゆっくりと冷やします。
直ちに動物病院を受診しましょう。
ケージ内の温度が20℃を下回るとハリネズミは元気を無くし、さらに12℃以下になると低体温症になって、丸くなって動かなくなります。
動きが鈍くなったり、けいれんしている様子が見られたら要注意です。
低体温症はハリネズミの体に多大な負担を掛ける状態です。
早めの対処に加えて、ケージ内の環境の調査や再発しないように対策することが大切です。
36度ほどにした湯たんぽやペットヒーターでハリネズミの体をゆっくりと温めます。
その後、直ちに動物病院を受診しましょう。
ハリネズミが突然死する原因とハリネズミに多い病気・事故

ハリネズミは突然死が多い動物でもあります。
ハリネズミの死因やかかりやすい病気を知っておけば、突然死を防ぎ長生きさせることができるので覚えておきましょう。
ハリネズミが突然死する原因
●ストレス
ハリネズミはとてもストレスに弱く繊細な動物です。
ストレス過多の状態が続くと、免疫力が低下して病気になりやすくなるばかりか、心不全発症のリスクも高くなります。
大きな音や急に触るなど、ペットちゃんを驚かせるようなことはやめましょう。
また、ケージ内は暑すぎず寒すぎない適度な温度(24~29度)と湿度(40%前後)を保つようにしましょう。
何かに怯えたり大きなストレスを抱えると、警戒心から針を逆立てる仕草や「フシュー!」と鼻息を荒げる仕草が見られます。
ストレスのサインが見られた場合は接し方や飼育環境を見直してください。
●化学物質
シンナーなどのきつい臭いで、ハリネズミが死んでしまったという事例もあります。
家でスプレーなどを使用する場合は換気して、部屋に臭いが充満しないように気を付けましょう。
また、殺虫剤は注意書きをよく読み、使用するかを判断してください。
ハリネズミに多い病気や事故
アニコム損保の保険契約を行った人を対象にした調査によると、ハリネズミの保険の請求割合で圧倒的に多いのは「皮膚疾患」です。
次いで「全身性の疾患」、「消化器疾患」、「腫瘍」と続きます。
これらの病気は、最悪の場合ハリネズミを死に至らしめることもあります。

引用元)アニコム「家庭どうぶつ白書2023」(アニコムホールディングス株式会社)
*アニコム損保のペット保険「どうぶつ健保」の保険金支払い実績、同社が実施したアンケート調査の結果などに基づいたデータ
*「請求割合=保険金支払いのあったどうぶつの数/保険に契約しているどうぶつの数」と定義
*あくまで1年間のうちに1回でも保険金支払いがあった場合は1としてカウント
これらの病気や事故について詳しく見ていきましょう。
●ダニ
ハリネズミはダニ症から皮膚疾患になり、死んでしまうケースがあります。
・ケージ内に砂場を用意する
・定期的に36度程度のぬるめのお風呂に入れてあげる
・濡れタオルなどで体を拭いてあげる など
●ハリネズミふらつき症候群(WHS)
ハリネズミふらつき症候群とは、その名の通り歩くとふらつき最終的には全身が動かなくなるハリネズミ特有の神経系の病気です。
発症してから1~2年以内に亡くなる例が多く、原因不明で予防法や治療方法も確立されていない
●癌、腫瘍
ハリネズミは腫瘍ができやすい動物で、高齢のハリネズミは癌で死ぬケースが多いです。
・ハリネズミの体調や行動を毎日観察して、異変にすぐ気付けるようにする
・異変があればすぐに動物病院を受診する
・定期健診を受ける
●誤食・誤飲
誤飲・誤食によって中毒や消化不良を起こし、重篤な消化器疾患になることがあります。
かじると危険なものはケージ付近に置かないようにし、部屋を散歩させる場合は周囲を片付けて安全を確保しましょう。
電気コード類、薬、化粧品、中毒性のある植物、設置型の殺虫剤 など
小さな異変に気付くための確認ポイント
突然死を防ぐためには、些細な異変にもすぐに気付けるように、日頃からペットちゃんをしっかりと観察しておくことが大切です。
●食べる量が減っていないか
食べることが大好きなペットちゃんでも、死ぬ前は急激に食欲が落ちることがほとんどです。
ある日突然、食欲がなくなったという場合は要注意です。
他にも病気や温度変化などのストレス、餌に飽きたことをきっかけに食欲不振になることもあります。
早めに動物病院で相談しましょう。
●急激な体重の増減がないか確認する
体重が急激に増減していたら体調不良のサインかもしれません。
体重は定期的に小数点以下まで表示できる体重計で測定し、適正体重をキープしましょう。
●排泄物に異常はないか
下痢が続く、通常と違う色の便が出るなどペットちゃんの体調を排泄物から知ることもできます。
日頃から排泄物をチェックし、異常に気付いたら病院で診てもらい、お家での対策についても相談すると良いでしょう
ハリネズミが亡くなってしまったら適切な方法で安置してあげよう

ハリネズミが亡くなってしまった場合は、きちんと供養できるように以下の手順で安置しましょう。
①ハリネズミちゃんの死亡確認をする
ハリネズミは仮死状態になることがあります。
死んでいるのかはっきり確認できない場合は、動物病院で診断してもらいましょう。
*仮死状態か死亡しているかの確認方法はこちらをご覧ください
②ハリネズミちゃんの身体を拭いてあげる
これまでの感謝の気持ちを込めて身体をきれいに拭いてあげましょう。
遺体から体液や排泄物が溢れることもあるので、定期的に確認して清潔な状態を保ってあげてください。

③ハリネズミちゃんの身体を冷やす
棺の中にペットシーツやタオルを敷き、その上に優しく寝かせてあげましょう。
ハンカチなどで包んだ保冷剤やドライアイスを体に添えて冷やし、安置している間はこまめに取り替えます。

夏場ならクーラーを効かせた涼しい部屋、冬場なら暖房のついていない部屋に安置することで遺体の腐敗を遅らせることができます。
適切に安置すれば夏場で1~2日ほど、冬場で2~3日ほど遺体をきれいに保てます。
この間にペットちゃんの火葬の手配や葬儀を行ってあげてください。
安置方法や供養方法について詳しく知りたい方は下記コラムをご参照ください。
大切なハリネズミに長生きしてもらうための5つの秘訣

ペットとして飼われているハリネズミの寿命は3~7年、平均で4年ですが、中には10年もの長生きをしたハリネズミもいます。
健康や飼育環境に気を付ければ、愛するペットちゃんとより長く一緒にいられる可能性が高くなるのです。
それでも人の寿命と比べるととても短く、ハリネズミと共に過ごせる時間は特別で尊いものだと実感できるのではないでしょうか。
長生きのための5つの秘訣
健康の基本は人と同様、バランスの良い食事と適度な運動、ストレスのない環境です。
それに加えて、長生きのためには毎日の健康チェックや定期的な健康診断がとても大切です。
①バランスの良い食事
ハリネズミに必要な栄養素がバランス良く配合されている専用フードを主食にしましょう。
副食やおやつとしてコオロギやミルワーム、野菜、果物、鶏肉などを与えます。
ペットちゃんの好みや食べる量をよく観察して、与える量を調節してください。
飲み水は常に新鮮なものを用意してください。
| 食事量の目安 | 主食:大さじ1~2杯 副食:小さじ1~2杯 おやつ:少量 | 
| 食事回数 | 成長期:朝・夜の2回 大人:夜1回 | 
| 食べてはいけない物 | 牛乳、チョコレート、ネギ類、アーモンド、ブドウ など | 
②適度な運動
野生のハリネズミは一晩に3~5㎞もの距離を歩き回ることもあるため、飼育下では運動不足への対策が必要です。
・ケージ内に回し車を設置する
・ケージ内におやつを隠して探させる
・生きたミルワームやコオロギを与えて捕まえさせる
・飼い主様が見守る中で部屋んぽ(部屋の中を散歩)をさせる など
③ストレスを溜めさせない
ハリネズミは非常に神経質な動物なので、飼育環境は徹底して管理しましょう。
クーラーやヒーターなどを利用して、ケージ内を適切な温度・湿度に保ち、大きな音や強い臭いがするような場所は避けてください。
夜行性のため、昼間は薄暗くして静かに過ごさせてあげましょう。
また、ハリネズミは警戒心が強いので、最初から過度なスキンシップをすることは厳禁です。
まずは、飼い主様の臭いがついた服などをケージに入れて2~3日様子を見ることから始め、ゆっくりと慣らしてあげましょう。
・生態や性質に合わせた環境を整える
・適度な距離間で接する など
④毎日の健康チェック
体調の異変にいち早く気付けるように、毎日の健康チェックは欠かせません。
また、ダニ症予防のため2週間ごとを目安に、36度ほどのお湯で足湯をしたり、濡れタオルなどで体を拭いてあげましょう。
・体重や食事量の変化
・皮膚や針、爪に異常はないか
・排泄物(ストレスや消化不良で便が緑色になる)の確認 など
⑤定期健診
病気やケガの早期発見、早期治療のために半年に1度を目安に健康診断を受けましょう。
・通いやすい距離にある
・ハリネズミを専門に診てくれる獣医師がいる
・衛生管理が行き届いている
・医療設備が新しい
・信頼できる/相談しやすい
まとめ
死期が近づいたハリネズミには「食欲が無くなる」「睡眠時間が増える」「意識がもうろうとして体温が低下する」などの変化が起こります。
また、ケージ内の温度が低すぎる、または高すぎるなど適温が保たれていないことで弱ってしまうこともあるため注意が必要です。
大切なペットちゃんと少しでも長く過ごせるように、日々健康管理をしてあげることは飼い主様の務めです。
筆者は幼少期から犬や猫を飼っていますが、平均寿命よりも早くこの世を去った子もいれば、大往生だった子もいます。
すぐに異変に気付けて、手遅れにならずに済んだ子もいました。
ペットちゃんごとに体質も性格も全然違うので、その子に合ったお世話がとても大切だと実感しています。
ハリネズミの場合、本当に死んでしまったか判断できないときや、なぜ死んでしまったかわからず悲しいときもあるでしょう。
そんなときは獣医師に診てもらうことで納得でき、心が救われることもあるので、頼れる動物病院は必ず見つけておいてください。
この記事の執筆者
 
      ペット火葬
ハピネス 編集部 S・A
愛犬・愛猫・愛鳥など8匹以上を見送った経験を持ち、現在も愛犬と暮らす動物愛好家。初代愛犬を満足に供養できなかった経験からペット火葬ハピネスへ入社。あたたかなペット葬儀のための情報を発信。私生活では動物保護ボランティアへの支援を行っている。




 
  
  
  
  
 
 
            


 
               
              

 
    

 
                             
                               
                               
                               
                               
                               
                               
                               
                              
 
                   
            