背中の針が特徴的なハリネズミは動物カフェやSNS上で人気を集めており、飼いたいと考える方も増えています。
しかし、ハリネズミはまだまだペットとしてはマイナーなため、寿命はどのくらいなのかや、具体的な飼い方がわからないといった方も多いでしょう。
当コラムでは、そんなハリネズミの寿命や、長く一緒にいられるコツを中心に解説します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
ハリネズミの寿命、人と比べると?
ハリネズミは小動物なので成熟するスピードが早く、平均寿命は2~5年です。
しかし、飼育環境次第では5年以上生きることもあり、非常に稀なケースですが10年生きたハリネズミもいるそうです。
ハリネズミと人間の年齢を比べてみると、ハリネズミの1歳は人間の16歳に相当し、3歳(人間でいうと大体54歳)からシニア期に入ります。
5年生きると人間の90歳に相当すると考えると、成長の早さがわかるはずです。
ハリネズミの特徴
ハリネズミはペットとしての歴史が比較的浅い動物です。
そのため、未だに明らかになっていないことも多く飼育方法が確立されていなかったり、診察できる病院が多くないこともあります。
臆病で神経質
ハリネズミは基本的に臆病で神経質な性格です。
ちょっとしたことに警戒し威嚇行動を見せることもありますが、これは小動物であるが故の本能による行動です。
当然個体差はありますが、おもちゃを新しくすることすらもストレスになる子もいます。
寿命を縮めてしまわないよう、細心の注意を払ってお世話をしましょう。
懐きづらい
ハリネズミによって性格は異なりますが、基本的に臆病な上、単独行動をとる生態ですので人に懐くまでに時間を要します。
飼い主様の匂いに慣れることで少しずつ心を開いてくれるので、気長にその時を待ちましょう。
ちなみに、他のハリネズミと同じケージで飼うとケンカなどのトラブルになりますので、多頭飼いをする場合は必ずケージを分けましょう。
実はモグラの仲間
ハリネズミはネズミという名前がついていますが、実はモグラの仲間です。
そのため薄暗い場所を好みます。
飼育スペースには潜り込んでリラックスできる場所を用意してあげましょう。
夜行性
ハリネズミは夜行性ですので、日中家をあける一人暮らしの方には比較的飼いやすいと言われています。
当然、日中寝ているハリネズミを起こすのは大きなストレスになるので、スキンシップはハリネズミが活動を始める夜にしましょう。
視覚が鈍い
聴覚、嗅覚はとても鋭いですが、視覚は鈍いです。
大きな段差があると踏み外して落ちてしまうこともあります。
また、視力は悪くても眩しさは感じやすく、光がストレスになります。
ストレスに非常に弱い
ハリネズミは繊細で音や匂い、光、振動、環境の変化にストレスを感じます。
ストレスにより免疫力が下がり病気になったり、直接病気の原因となることがあります。
ストレスを減らすことが、ハリネズミの寿命を延ばす重要なポイントです。
病気やトラブルを知っておく
ハリネズミがかかりやすい病気や起こりやすいトラブルをご紹介します。病気や事故について知っておけば早期発見やリスク回避ができ、結果的に寿命を延ばすことができます。
皮膚疾患
皮膚が薄く柔らかいハリネズミはダニ症という皮膚疾患にかかりやすいです。
痒がる、脱毛、脱針、フケ、皮膚の赤みがあればすぐに病院で投薬してもらいましょう。
他にもカビ、細菌、床材によるアレルギーで皮膚が炎症を起こすことがあります。
ケージ内は常に清潔にしておきましょう。
悪性腫瘍(ガン)
腫瘍には良性と悪性があり、悪性腫瘍はいわゆるガンです。
ハリネズミの場合は口の周りや子宮にできるケースが多く、手術で摘出するためハリネズミの体に大きな負担がかかります。
しこり、腫れ、食欲がない、下痢、腹水があれば速やかに病院で診てもらいましょう。
口腔トラブル
ハリネズミは歯磨きを習慣づけるのが難しいため、口臭や歯垢の蓄積、歯茎の腫れなど口腔トラブルが起こりやすいです。
歯の痛みがあると食欲不振になったり、悪化すると抜歯が必要になることもあります。
柔らかい食事以外に、噛む必要のある繊維質な昆虫を与えて食べかすが溜まらないようにしましょう。
プラスで液体歯磨きを使うと効果的です。
肥満
歩いている時に床にお腹がついたり、背中のグルーミングができないほどの太り方は肥満です。
肥満は脂肪肝などの病気の原因になるため、寿命を縮めてしまわないようにダイエットをしましょう。
カロリーの高いおやつを控え、少しずつ運動量を増やし時間をかけて体重を落としていきます。
誤飲
ハリネズミは初めて目にしたものを口に含み、唾液と混ぜて体に塗る「アンティング」という独自の習性を持ちます。
臆病なわりに好奇心旺盛なため、電気コードや薬、化粧品、植物などの誤飲で中毒や腸閉塞を起こすことがあります。
ケージの周りや部屋んぽの際は不要な物を全て片づけておきましょう。
また、ケージ内の床材は誤飲しても健康被害のない素材を選ぶのが安全です。
ハリネズミふらつき症候群(WHS)
治療方法が見つかっていない神経系の病気で、後ろ足の不調から始まり、次第に全身が麻痺していきます。
食事や排泄もできなくなるため、発症してから1~2年以内で亡くなる致死率の高い病気です。
定期的な健康チェックで寿命を延ばす
大切なハリネズミとは、一日でも長く一緒に過ごしたいですよね。
この章ではハリネズミの寿命を延ばすコツをご紹介します。
温度管理
ハリネズミにとって過ごしやすい温度は22~29℃、湿度は40%前後です。
この適正気温より高すぎたり低すぎる場合は、エネルギー消費を最小限にする休眠状態になります。
休眠状態はそのまま命を落とすことになりかねないので、ケージの近くに温度計を置いて温度管理を徹底しましょう。
体重測定
定期的に体重測定をし、太りすぎや痩せすぎに気づけるようにしましょう。
ハリネズミは小動物なので、小数点以下まで細かく測定できるキッチンスケールで体重を量ります。
最大1kgまで測定できれば十分です。
測定中に逃げてしまわないよう、深さのある計量カップなどにハリネズミを入れるとスムーズに測定ができます。
食事管理
バランスよく栄養を与えることはもちろん、柔らかいものや硬いものも偏りなく与えましょう。
喜ぶからと高カロリーなおやつをたくさん与えていると、寿命を縮めてしまいます。
排泄物に異常はないか
排泄物は健康管理において欠かせないものです。
ストレスや消化不良で便が緑色になったり、腫瘍により血尿が出るなど、変化があればすぐに病院へ連れていき原因を探りましょう。
普段と違う点はないか
毎日ハリネズミの様子を観察していると、いつもと様子が違うことにすぐに気づけるようになります。
様子がおかしいと思ったら、何らかの病気の可能性があるので、飼い主様自身で解決しようとせずに病院へ連れていきましょう。
良いハリネズミライフを!
ハリネズミの過ごす環境や健康状態をしっかりと整え、ストレスから守ってあげることが寿命を延ばす秘訣です。
臆病で繊細なハリネズミですが、飼い主様が心を込めてお世話をすれば少しずつ心を開いてくれます。
きちんと面倒を見ることは病気の早期発見にも繋がり、大切なハリネズミは寿命を全うしやすくなります。
ハリネズミの寿命は決して長くないからこそ、かけがえのない家族であるハリネズミが寿命を迎えるその日まで、大切に育ててあげてくださいね。
まとめ
まだまだ謎の多いハリネズミですが、性格や病気、適正環境を知り寿命を縮めないように接することが長生きに繋がります。
ハリネズミは特にストレスに弱いため、少しでも安心して過ごせる環境を整えてあげることが大切です。
また、病気や起こりやすいトラブルを把握し、適切に対処してあげることも大切です。