家族の一員として大切に飼育していたデグーであっても、急に体調を崩して、そのまま数日の内に亡くなってしまうこともあります。その原因が分からず、後悔を抱く方が少しでも減ることを願い、このコラムではデグーが亡くなってしまう原因と事前に対処する方法をご紹介します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
デグーについて知る
デグーの生態について知っておくと体調を崩した理由や対処方法も理解しやすくなります。デグーが元気なうちに、かかりやすい病気なども合わせて知っておきましょう。
特徴
デグーはテンジクネズミ亜科に分類されており、モルモットやチンチラなどに近い動物です。平均寿命は種類や大きさによりますが6〜8年程で、訓練すれば芸を覚えるほどに賢い種です。
昼に活動を行う昼行性であり、社会性が高いために野生だと5〜10頭ほどの家族単位の群れで生活しています。また山脈の斜面に生息しているので立体的に活動を行い、砂浴びで体をきれいに保ちます。生活は巣穴を作って行うため、シェルターや砂場を設置した高さのある飼育ケージを使用し、生息地の環境に似た飼育場所を作る必要があります。
かかりやすい病気
・熱中症・低体温症
・糖尿病
・ビタミンC欠乏症
・下痢
・肥満
・白内障
・真菌症(しんきんしょう)
・不正咬合(ふせいこうごう)
私たちにも聞き馴染みのある病名もありますが、中でも真菌症と不正咬合について少しだけご紹介します。
真菌症とはカビが増殖して皮膚に炎症を起こし、毛が抜けるなどの症状が出る病気のこと。体が弱い子どものデグーには特に注意が必要です。
不正咬合は読んで字のごとく、噛み合わせや歯並びの状態が悪くなることです。噛み合わせが悪いと食事が取りにくくなり、健康を害してしまいます。
それに加えて紹介した病気の中では糖尿病になりやすいので、糖やでんぷんを多く与えないように気を付ける必要があります。少しでも異変を感じたときは、すぐにかかりつけ医に診てもらうようにしてください。
デグーは突然死しやすい?
インターネットではデグーが突然死した経験談が多く語られていますが、デグーは突然死しやすい種族なのでしょうか?
回答としては「そうとは限らない」です。デグーは生態系の中では捕食される側に属するので、弱っている姿を察知されないように隠す習性があります。その習性のため、体調が悪くても普段通りに見え、いつから体調を崩しているのか分からないために、急に体調が悪くなったと誤解しやすいのです。
体調を崩す原因は様々ですので、ご飯をいつもよりも食べない、遊ばないで寝ている時間が多くなったなど、些細な変化でも見逃さないことが大切です。
突然死でのお別れはペットロスになりやすく、悪化すると心身に影響を及ぼします。ペットロスを乗り越える方法を紹介したコラムもぜひ参考にしてみてくださいね。
『ペットロスを乗り超える・・・新しいペットを飼うタイミングや注意点』
デグーの死に繋がる原因は?
デグーが亡くなってしまう原因には以下の4点が挙げられます。
生まれた時の状態
デグーは複数頭が一緒に生まれてきますので、生まれた時から他の子よりも小さいデグーや、気が弱くて母乳を他の子よりも飲めない子は、元気に成長しない場合があります。その結果、すぐに亡くなってしまったり、授乳期を無事に乗り越えたとしても病気を患いやすかったりと、生まれた時の個体差が影響して長く生きられないことがあります。
消化不良や誤飲
デグーは歯が伸び続ける動物ですので、繊維質の多い植物を噛むことで歯の形状を整えます。飼育されている状況では歯の形状を維持するためなのか、ケージやケージ内の物を齧ることが多いため、暖をとるためのタオルやハンモックなどをケージの中に入れていると、齧ったときに裂かれた布の欠片を誤って飲み込んでしまうことがあります。デグーは吐き出すことが苦手なために、一度飲み込んでしまうと腸閉塞などの原因になってしまい危険です。
特に子供や高齢のデグーは消化不良を起こすことが多いです。食べている様子をよく見ておく必要があります。
温度管理
デグーが快適に過ごせる最適な温度は20〜25℃で、湿度は50%前後といわれています。涼しくてカラッとした環境が理想ですが、日本では年中同じ環境下を保つのが難しいので注意が必要です。
人間とは温度の感じ方が違うのでケージ内を工夫して、寒い時は暖をとれる場所を、暑い時は涼をとれる場所を作り、デグー自身が温度調整できるようにしてあげるのもおすすめです。
特に体力を消耗する換毛期は温度調整だけではなく、滋養のある食事を選ぶなど、気を使う点が多いです。
強いストレスを感じる
デグーはストレスを感じやすい繊細な動物です。小さな環境の変化にも敏感なために、下記の事柄にも注意が必要です。
・いつもとは違う食べ物
・温度変化
・ケージ内の汚れ
・寂しさを感じる
忙しくて掃除の間が空いたり、構ってあげられないことがあるのは仕方のないことですが、それが何日も続くとデグーが強いストレスに晒されてしまうかもしれません。自分の生活に合わせて、デグーの飼育環境を見直すようにしましょう。
どのようなことでストレスを感じる?
デグーはストレスを感じやすい生き物なので、細かい箇所まで注意を払ってあげる必要があります。また、小さな変化に気付いてあげられるように、日々の生活の中でよく見てあげることが大切です。
多頭飼いの場合
デグーを2頭以上飼っている場合、同じケージ内のデグーと気が合わないことがあります。これは私たちにも当てはまることですが、気の合わない人と一緒に暮らすのは相当のストレスを感じるもの。もしも後からデグーを飼う場合は、同じケージ内でも問題ないか、相性をよく観察する必要があります。
ケージの問題
デグーは山脈の斜面に生息しているために、上下運動を行う習性があります。狭いケージの場合、動き回ることができずに窮屈さを感じてしまうかもしれません。ケージを置く幅が狭いのであれば、高さのあるものを選ぶなどゲージにも注目しましょう。
寂しさを感じる
デグーは集団で生活する習性があるので、1頭だけというのは寂しさを感じるようです。経済状況によっては1匹しか飼えないという方もいますので、構ってあげる頻度を増やして、寂しさを紛らわせてあげるのもいいかもしれません。
デグーを長生きさせるために必要なことは?
デグーの長生きを願うためにできることは、よく観察し、小さな変化に気付いてあげることです。どれだけ注意していても、思いがけないことが原因で亡くなってしまう場合があるので、迅速に対処できるようにしておきましょう。そして、ストレスのかからない環境作りを行ってあげることも大切です。
ケージの置き場所
エアコンや日光が直接当たらない場所で、デグーが落ち着いて過ごせる場所にケージを配置し、出入り口の側やトラックが通ったときに揺れを感じる騒がしい場所は避けましょう。
ケージの掃除
掃除の頻度としては、下記が理想的です。
トイレ掃除:1日1回
砂の交換:週に2回
ケージを分解しての掃除:月に1回
少しでも掃除を楽にするために、フンが下に落ちるようになっているゲージを使用する方法もあります。ケージは置き場所や掃除のことをよく検討して買うようにしましょう。
エサ
1日2回、牧草をメインにエサをあげましょう。歯の形状を保つためにも牧草やチモシーは繊維質の多いものを選び、フードは繊維質が多く、低脂肪のものを選ぶようにしましょう。
ペットショップや病院で推奨されていることをまずはしっかりと行い、デグーの様子を見ながら好みのケージやエサに変えていき、良い環境づくりを行いましょう。方法が分からない場合は獣医さんなど専門家に相談することもおすすめです。
まとめ
比較的お世話のしやすいデグーは人気のペットですが、小さく繊細な生き物であることを忘れてはいけません。日々行動をよく観察し、少しでも違和感を感じたときはすぐに病院に連れていくことが大切です。早めの治療で助かる場合もあるので、不安や違和感を感じたらすぐに行動しましょう。
またストレスのかからない環境づくりや、日々の愛情表現を大切にすることで、長く一緒に過ごすための秘訣となるのではないでしょうか。まずはデグーについて知ることから始めてみてください。