つぶらな瞳にスマートなフォルムの魅力的な姿をしたヘビは人気のペットです。
鳴かず、大人しい種類も多いことから一人暮らしの方にも人気がありますが、大人しくしているのではなく元気をなくして動かなくなっている場合にはどのように対処すればいいのでしょうか。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
ヘビに元気がない理由
大切なペットであるヘビが元気をなくしている状況は非常に心配なもの。
しっかりと原因を突き止めて対策してあげましょう。
元々動かない性質
ヘビは元々活発に動き回る動物ではないため、動かない=元気がないと判断するのはやや早計です。
しかし、動かない理由にも「寒くなったので動きが鈍くなった」「眠っていた」のような心配いらないものから、病気やケガで「動かない」のではなく「動けない」状態になっているなどこちらから対処してあげる必要があるものまでさまざまです。
毎日観察を欠かさず、異常があればすぐに気付いてあげられる環境作りが大切です。
冬眠時期が近い
ヘビは変温動物なので気温が下がると動きが鈍くなり、エサも食べなくなります。
それを「元気がない」と判断して無暗に温度を調整したり、無理やりエサを食べさせたりしてはかえってヘビにダメージを与えることになってしまいます。
卵詰まり
卵生の種類のヘビを飼育している場合「卵詰まり」も体調を崩す原因として考えられます。
交尾させる機会がなかったにも関わらず無精卵を身ごもって卵詰まりを起こすケースも考えられます。
しっぽのあたりが腫れたように膨れていて、原因にも心当たりがない場合には病院に連れて行ってあげるのがおすすめです。
その他にもストレスで拒食状態になっている、ダニがついてダメージを受けているなどの理由が考えられます。
元気をなくしている状態なら、極端に言えば原因を取り除けばいい話ですが、弱っていて生命の危険が迫っている可能性も考慮して様子を見てあげる必要があります。
ヘビが死ぬ前に見せる行動
ヘビが弱っている場合には、以下のような行動がよく見られます。
呼吸がおかしくなる
ガラガラヘビのように音を出す能力を持った種類を除けば、ヘビは声帯を持っていないため、犬や猫のように鳴き声を出すことは出来ません。
そのため、呼吸する音がずっと聞こえていたり、普段とは違って口を開けっ放しにして口呼吸をしているなど、呼吸に異常が見られる場合には肺炎などの病気にかかっている可能性が考えられます。
脱皮した皮が残っている
ヘビは脱皮を繰り返して成長していきますが、脱ぐ皮が引っかかって残るなどして上手に皮を剥がせなかった場合はその部分の血行が悪くなることにより、次の脱皮の際により多くの箇所の脱皮失敗につながり、その箇所が壊死していく……といったような負のスパイラルに巻き込まれた結果、命を落としてしまうことも考えられます。
しかし、あまりに神経質になりすぎた結果、ヘビにストレスを与えてしまっては元も子もないので、あくまで可能性として覚えておいて、あまりに脱皮が上手くいっていないと判断した場合にのみサポートしてあげるようにするのがおすすめです。
ヘビが過ごしやすい環境は?
ここまでヘビが元気をなくす原因を紹介してきましたが、それらの原因は普段からの観察と飼育環境で対策・改善できる場合も多いです。
この章ではヘビの過ごしやすい環境についてご紹介します。
室温を管理する
種類にもよりますが、およそ25~30度がヘビの飼育には適温とされています。
ヒーターを設置するのはもちろん、温度計で常に適温が保たれているかを確認し、ケージの置き場所は直射日光が当たらず、温度が急激に上下しない場所に設置するなどの工夫が欠かせません。
脱皮しやすい環境
手足のないヘビは体を物にこすりつけることで少しずつ皮を脱ぎ捨てていきます。
ケージ内にシェルターと呼ばれる隠れ場所を作るのはヘビが安心して過ごせるスペースを作るためだけではなく、脱皮をスムーズに行える環境を整える狙いもあります。
また、脱皮途中に脅かしてしまったせいで脱皮不全状態に陥ってしまったりしないよう、ケージはある程度静かな場所に設置するなど、脱皮しやすい環境を整えてあげましょう。
ケージ
ケージは手入れと観察のしやすさを考え、フタ全体を取り外せるタイプがおすすめです。
ヘビはフタをこじ開けて脱走する場合もあるため、ロックできるタイプか、そうでないなら重石を乗せておくなどの工夫が必要です。
毎日確認する事柄
「飲み水が減っていないか?」「糞をしていたらすぐに取り除く。この際にお腹を下していないかを確認」「目が白くなっているなど脱皮の兆候が見られないか?」など健康チェックは毎日行うようにしましょう。
つまるところ、ヘビが過ごしやすい環境というのは、飼い主の目が隅々まで行き届いている状況で、異常があればすぐに対処してもらえる環境のことです。
では、異常に気付いた場合はどのように対処すればいいのでしょうか。
ヘビに元気を取り戻してもらうための方法
元気がない原因がわかり、それを解消するための環境の見直しまで終われば、後はヘビに元気を取り戻してもらうだけです。
そのために飼い主ができることは何でしょうか。
通院
人間に限らず、ヘビも症状を見てネットで検索すれば大抵の原因は特定できる時代ではありますが、あくまでその場しのぎの知識に過ぎません。
やはり専門家に見せて治療法を判断してもらうのが一番です。
しかし、エキゾチックアニマルであるヘビは近隣の動物病院では専門外として診察を断られるケースも考えられますので、有事の際に慌てて調べるのではなく、飼育を開始した段階でヘビを診察してくれる動物病院を確かめておくことが重要です。
自力での治療
病院で診てもらうのが一番確実な方法ではありますが「場所が遠い」「年末年始などで休業中」など病院を頼れないケースも考慮し、ヘビの生態に詳しい専門家に連絡・相談できる方法を確保しておくなど、自力で治療する方法と道具を事前に備えておくことも大切です。
SNSやネット掲示板にはヘビ飼育専門のコミュニティなどもあるため、症状を書き込んで知恵を貸してもらうのもおすすめです。
ヘビの供養方法
手を尽くしたうえでも生物である以上はいつか寿命を迎えるもの。
後悔することも多いかもしれませんが、遺体を丁寧に葬ってあげて心から供養してあげるのが大切な家族だったヘビにとって一番嬉しいことではないでしょうか。
遺体の保存
保冷剤を入れた箱の中に安置してあげましょう。
その後は直射日光を避け、できる限り涼しい場所に置いてあげるのがポイントです。
供養の方法を選ぶ
ヘビは犬や猫と同じようにペット火葬業者・ペット霊園に依頼して火葬してもらうこともでき、ご自身が所有している土地であれば敷地内での埋葬も選択肢に入ってきます。
業者に依頼すればこちらの要望に合わせて適切に作業を進めてくれますが、作業料金がそれなりにかかります。
敷地内で埋葬する場合には身近な場所に愛するペットが眠っている安心感と引き換えに、野生動物や雨に掘り起こされないように深く穴を掘る時間と労力が求められるなど、それぞれメリット・デメリットがあります。
ご自身の事情に合わせて選ぶようにしましょう。
まとめ
ヘビは犬や猫のように表情や鳴き声で不調を伝えることができません。
そのため、飼い主が呼吸がおかしくなっている、脱皮不全を起こしているなどの不調に気付いてあげ、対処する必要があります。
加えて、室温管理を徹底してケージ内を過ごしやすい環境に整えてあげることも大切です。