愛する家族として長い年月を共に過ごしてきた愛犬との最期の時間を迎えるのはとても辛いものです。ですがその時が訪れたら、悔いのないようしっかりと供養して見送ってあげましょう。
このコラムでは愛犬の火葬方法や準備などについて詳しく解説していきます。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
愛犬が亡くなったときにすること
大切な愛犬が亡くなってしまった喪失感は耐え難いものでしょう。その現実を受け入れるのもなかなか難しいかもしれません。しかし、長時間そのままにしているのも可哀そうです。一緒に過ごしてきた愛犬とのかけがえのない時間に感謝しながら、お見送りの準備をしてあげましょう。
1:体をきれいに整える
体格の違いなどで個体差はありますが、犬は死後2~3時間で死後硬直が始まります。完全に硬直してしまう前に手足を折り曲げてお腹側に寄せ、楽な体勢で寝ているような状態にしてあげましょう。
また、体制を整えるのと同時に濡れた布などで体を拭いて、毛並みを整えてあげましょう。目が開いたままになっていれば閉じてあげるようにし、難しければハンカチなどの布をかけてあげましょう。
2:愛犬の亡骸を安置する
愛犬が落ち着いて静かに過ごせるように、体よりも一回り大きい箱を用意して中に寝かせてあげましょう。愛犬の遺体から体液が出てくることがありますので、きれいに拭きとり脱脂綿やティッシュなどで詰め物をし、体の下にはペットシーツやタオルなどを敷いてあげましょう。気温や湿度の影響で進行速度は変わりますが、遺体は徐々に腐敗してしまいます。早めの火葬が難しい場合は、きれいな状態を保てるように身体を冷やして腐敗を遅らせるようにしましょう。
棺の周りにお花を飾る、線香を立てる、好きだったおやつを供えるなどして簡単な祭壇にしてあげるのも良いでしょう。
ドライアイスや保冷剤を使用する安置方法
ドライアイスや保冷剤を使用する場合は布などで包み、愛犬の遺体と共に棺にいれてあげます。ドライアイスを使用するときには棺の中の空気が膨張し、箱が破裂する危険がありますので、密閉はせず必ず蓋を少し開けておくようにしてください。
こまめに取り換えれば約4日ほどはきれいな状態で安置することができます。
冷蔵庫・冷凍庫を使用する安置方法
遺体を布に包んで箱に入れ冷蔵庫や冷凍庫で安置する方法です。行えるのは冷蔵庫や冷凍庫に入る小型の犬種に限られますが、一定の低温を保って安置できるので1~2週間ほど安置することができます。
食品を入れる場所に遺体を安置することに抵抗を感じる方もおられると思いますが、すぐに火葬できない事情がある場合には良い方法だといえます。
3:供養の準備をする
愛犬に天国まで持っていってもらいたいものを準備しましょう。よく遊んだおもちゃ、好きなフード・おやつ、家族との写真などを棺に入れてあげましょう。火葬の際には金属やプラスチック製品など、一緒に入れられないものもありますので、事前に依頼する業者に確認しておきましょう。
4:火葬の依頼をする
火葬を依頼する場合、役所またはペット葬儀業者に頼むことになります。
火葬にも方法や設備にいくつか種類があります。飼い主様がどのような形式で火葬してもらいたいかで選ぶようにしましょう。
次の章で火葬の種類や設備の違いを詳しくご紹介いたします。
火葬にはどんな種類がある?
火葬にはその方法の違いで3種類、設備面の違いで2種類に分けられます。それぞれの特徴と違いをご紹介します。
火葬方法の種類
火葬方法は大まかに「合同」と「個別」に分けられます。
一任合同火葬
数匹のペットちゃんを一緒に火葬する方法です。「寂しくないようみんなと一緒に旅立ってほしい」と考える飼い主様にとっては魅力的な方法です。他の火葬に比べて、料金が安価なのも特徴です。
しかし、火葬後は他のペットちゃんの遺骨と一緒に霊園や合同供養塔に納骨される場合が多いため「愛犬の遺骨を手元に置いておきたい」「遺骨を自宅の庭に埋葬したい」という要望の場合には向きません。
一任個別火葬
愛犬一匹だけを火葬する方法です。飼い主様の立ち合いはなく、スタッフに遺体を預け、火葬してもらいます。返骨を希望する場合には事前にその旨を伝えておきましょう。返骨を希望しない場合はペット霊園や合同供養塔などに納骨されます。
「個別にしっかりと見送ってあげたいけれど、焼かれるところを見るのは辛い」「遺骨を拾うのは精神的に厳しい」などの場合におすすめです。
立会個別火葬
個別で行う愛犬の火葬に立ち会う方法で、飼い主様の手で拾骨まで行います。最後まで自分の手で見送ってあげたい飼い主様におすすめの方法です。
自治体と業者、どっちに頼む?
多くの自治体では「一任合同火葬」ですが、自治体によっては「一任個別火葬」を行っているところもあります。
対してペット葬儀業者では「一任合同火葬」「一任個別火葬」「立会個別火葬」を飼い主様が選ぶことができます。
そのため、愛犬の火葬を依頼する前には必ず事前に内容を確認してください。
火葬を行う施設の種類
近年はご自身で遺体を搬出しなくてもいい「訪問火葬」と呼ばれるサービスを利用する方も多いです。
訪問ペット火葬
火葬設備を備えた専門の特別仕様車が自宅まで訪問し、その場で火葬をしてくれます。「火葬場が遠方だが、車がなくて運べない」「愛犬が大型で運ぶのが大変」などの場合におすすめです。
まれにお住まいの地域によっては規制があり、その場での火葬ができないこともありますので事前にペット葬儀業者に確認しましょう。
ペット霊園施設での火葬
火葬設備が整ったペット霊園施設で、出棺やお見送り、収骨、納骨までを行えます。祭壇なども用意されていて、人間同様の葬儀が行えるところもあります。
犬の火葬の料金相場
愛犬の火葬費用は、体の大きさや火葬方法によって変わります。体が大きくなるほど料金は高くなりますし、火葬方法も合同より個別のほうが高くなります。
火葬方法で比較すると「一任合同火葬 < 一任個別火葬 < 立会個別火葬」の順で高くなります。訪問火葬を依頼した場合には訪問出張料金がプラスされます。
一般的なペット火葬の料金相場をご紹介します。
一任合同火葬 | |
---|---|
体重 | 値段 |
2kg未満 | 10,000円前後 |
2~5kg | 15,000円前後 |
5~10kg | 20,000円前後 |
15kg以上 | 25,000円~ |
一任個別火葬 | |
---|---|
体重 | 値段 |
2kg未満 | 15,000円前後 |
2~5kg |
20,000円前後 |
5~10kg | 30,000円前後 |
15kg以上 | 30,000円~ |
サービス内容や料金プランが異なるので詳しくはホームページを確認したり、事前に見積もりを利用したりしましょう。
信頼できる業者選びのコツ
業者の中にはペットちゃんの遺体を遺棄するなどの悪質なペット葬儀業者も存在しています。悪質業者に依頼してしまわないように優良なペット葬儀業者を見分けるコツを覚えておきましょう。
口コミ・お客様の声を確認する
実際にサービスを受けた人の意見は参考になるので、もし身近にペット火葬を依頼したことがある方がいれば相談してみましょう。またホームページ上に口コミがあり、その内容に対する業者の返答などがあれば詳しく見るようにしてください。言葉遣いや誠実な対応をしているかなどを判断することができます。
無料見積もりを依頼する
要望を全て伝えた上で見積もりを作成してもらいましょう。火葬当日に慌てないように事前に確認しておくと安心です。
またあまりにも安価な場合でも注意しましょう。経営努力で安さを実現している業者もありますが、何かの作業工程を省いて安くしているような悪質な業者かもしれません。
事前に施設の見学をする
ペット霊園施設のようなところであれば、依頼する前に見学させてもらうのも良いでしょう。きちんとしているところであれば問題なく見学させてくれます。何かと理由を付けて見学を断るようなところならば注意が必要かもしれません。
愛犬が亡くなった後の手続きと服装
いざ愛犬を送り出すときになって、「自分はどのような服装で臨めば良いのだろう」と迷う方もおられます。また愛犬が亡くなった後にはどのような手続きが必要なのかもあわせて、こちらの章でお伝えします。
見送る際の服装
訪問火葬の際には特に服装は気にしなくても大丈夫です。ペット霊園施設など火葬場へ愛犬の遺体と共に訪れる場合には落ち着いた色味の服装を意識すると良いでしょう。
施設によっては人の葬儀場や寺院と隣接しているようなところもあります。その場合には周りの方の失礼にならないよう、喪服や礼服で訪問するのが望ましいでしょう。
愛犬が亡くなった後の手続き
愛犬を登録した市区町村の自治体や役場に、愛犬の死後30日以内に死亡届を提出しなければいけません。これは狂犬病予防のために登録されている愛犬の情報を消してもらうためです。
愛犬を亡くしたばかりで辛いことですが、必ず30日以内に手続きを済ませましょう。
まとめ
いつかは訪れると覚悟していても、実際にその時を迎えると、とても辛く悲しい愛犬との別れ。それでも今まで一緒に過ごした楽しかった日々に感謝し、愛犬を天国に送り届けるまでしっかりと面倒をみてあげましょう。
ペットの火葬方法やプランも様々です。ぜひ飼い主様のお気持ちと愛犬にぴったりの方法を選んであげてください。