大切な愛犬との別れは飼い主様に大きなショックを与えるもの。
冷静に判断するのが難しくなることも多いはずです。
しかし、犬のお見送りに必要な事は適切な場所に問い合わせれば、後は専門家に任せられます。
そのため、お見送りまでの流れと、どこに問い合わせるかをあらかじめ知っておくことが大切です。
そこで今回は、いざという時に後悔しない行動を取れるよう、愛犬を見送るまでの流れを紹介します。
「愛犬が亡くなって混乱している方」「お別れに向けて備えたい方」の参考になれば幸いです。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
犬が動かなくなったらどうする?
犬が動かなくなった場合は急いで死亡確認をします。
犬の死亡は呼吸・脈拍・対光反射で確認できます。
生きていることがわかった場合、早めに病院で処置をすれば蘇生できる可能性もあります。
【呼吸を確認する】
犬の呼吸は「お腹の動き」「鼻に手を当てる」ことで確認できます。
ただし、犬が極度に弱っている場合は呼吸数がかなり少なくなることがあります。
焦っていると見逃すことも多いため注意が必要です。
根気よく、なおかつ落ち着いて確認するのがおすすめです。
【脈拍を確認する】
犬の脈は「心臓の鼓動を調べる」「股関節周辺の動脈を調べる」2つの方法で測れます。
犬の心臓は体を横向けに倒した際、前足の肘の少し後ろ辺りの位置にあります。
股関節の場合は、犬の後ろ足の付け根付近です。
いずれかの位置で1分を目安に脈拍を確認します。
【対光反射を確認する】
犬の瞳孔にライトを当て、瞳孔が収縮するか確認する方法です。
しかし、この方法は失明など犬の体にダメージを与える可能性があります。
呼吸・脈拍を確認し、亡くなっているかどうか最終確認する場合にのみ実行してください。
確認した結果、瞳孔に変化が無ければ死亡していることがわかります。
できる限りそばでお見送りを
WEBメディア「INUNAVI(いぬなび)」を運営する株式会社PLAN-Bが行った「ペットロス」に関するアンケートでは「愛犬を看取ることができなかった」と回答した方が全体の40.3%となっていました。
そして、愛犬を看取ることができなかった方は「1人きりで逝かせてしまった」「最期を見ていないので、現在も生きている気がしてならない」などの後悔を抱えているそうです。
愛犬が苦しんでいたり、呼吸を乱したりしている姿を直視するのは辛いものですが、目を背けている間に愛犬が旅立ってしまった場合はさらに大きな後悔を抱えることになってしまいます。
飼い主様が後悔しないようにするのはもちろん、愛犬が安らかな気持ちで旅立てるように、愛犬の最期を迎える際にはできるだけそばに寄り添ってあげてください。
※参考サイト
「愛犬を見送った325人にアンケート」INUNAVI(いぬなび)
犬の死後硬直
犬の種類や体格によって個体差はありますが、犬は死後1~3時間程度すると死後硬直が始まります。
楽な姿勢で眠れるように、早めに体勢を整えてあげましょう。
しかし、死後硬直から24時間程度で愛犬の体は再び柔らかい状態に戻ります。(解硬)
解硬後は全身の筋肉が緩んで便や体液が漏れ出ることがあり、遺体は少しづつ傷んでいくため早めにお見送りの準備を進めてあげましょう。
犬は死後硬直後に生き返る?
ネットの質問サイトでは「犬を生き返らせたい」という質問を見かけることがあります。
それに関連して、犬は死後硬直後に生き返る説も出回っています。
しかし、残念ながら死後硬直が起こった後に犬が生き返ることはありません。
亡くなった子が帰ってくることはありえないと気付いていながらも、それでも奇跡を信じずにはいられない。そんな飼い主様の愛情から来る悲しみが、この説の発生源かもしれません。
遺体が傷まないうちに、悔いが残らないように精一杯の愛情を込めて送り出してあげることが一番の供養になるはずです。
まずは丁寧に安置してあげましょう。
犬の安置方法
愛犬の死亡を確認したら、遺体の安置が必要です。
遺体を適切な方法で安置することで、火葬・葬儀まで遺体をきれいな状態で保つことができます。
愛犬の安置方法
まずは以下の品を準備し、愛犬の遺体を納める棺を用意します。
品名 | 必要な準備 | ポイント |
ダンボール | 棺になるので、1番最初に準備する | ペットちゃんの体が無理なく収まるサイズを選ぶ |
新聞紙・ペットシーツ | 準備した棺に敷き詰めます | 遺体から漏れ出た体液で棺・遺体を汚さないために必要 |
保冷剤・ドライアイス | 棺に遺体を寝かせて、 お腹・頭部を中心に冷やす | 定期的に交換するため、複数用意するのがおすすめ |
お供え物 | 花・おやつなどペットちゃんが好きなものを棺に入れる | プラスチック・金属は一緒に火葬できないため注意 |
安置後は2~3日を目安に火葬する
愛犬の遺体を棺に納めて、遺体を冷やす保冷剤・ドライアイスを適度に交換すれば、夏場なら2日、冬場で3日ほど遺体を安置できます。
しかし、室温や環境によってはそれより早く遺体が傷み始める場合も多いため、できるだけ早めに火葬・葬儀の準備を整えてあげましょう。
遺体を安置した後も、きれいな状態で見送れるように様子を見ることも大切です。
筆者が愛犬を見送った際は、遺体から漏れ出た体液の対処に困った経験があります。
汚れたらタオル・ペットシーツを交換し、きれいな姿で見送れるようにしてあげましょう。
犬の死後にやることを優先度順に紹介
犬の死後は「火葬・お見送りの準備」を行い、続いて「死亡届の提出」「保険の解約」を行います。
火葬・お見送りの準備(最優先:死亡から2~3日以内)
愛犬の供養方法は「火葬」「お庭への埋葬」がおすすめです。
ただし、愛犬の遺体を安置できるのは、季節や安置する場所にもよりますが2~3日程度。
それまでに火葬業者の手配や埋葬場所の決定など、お見送りの準備を整える必要があります。
埋葬する場合
私有地以外に埋葬すると法律違反で罰せられます。
そのため、愛犬を埋葬する場所はお家の庭など私有地に限られます。
【犬が土に還るまで何年かかる?】
愛犬を埋葬する飼い主様は「お庭に埋葬すればいつも近くにいられる」「いなくなってしまうのが寂しい」などの思いがあるはず。
しかし、犬は土に還るまで数十年と長い年月がかかります。
埋葬を選ぶ場合はその長い期間の間、適切な管理を続ける必要があることを覚えておきましょう。
悪臭や害虫によるトラブルを避けるためには、火葬してお骨にしてから埋葬するのがおすすめです。
火葬する場合
愛犬の火葬を依頼する場合は「自治体に依頼」「業者に依頼」の2つの選択肢があります。
【自治体に依頼する】
業者よりも安価で依頼できるのが最大のメリットです。
一方で、遺体はゴミや他のペットちゃんと一緒に火葬されて火葬後は埋め立てられるケースが多く、お骨は手元に帰ってきません。
そのため、手元供養や霊園・お庭への埋葬を検討している方には不向きです。
【業者に依頼する】
こちらの意向に沿って火葬・葬儀から納骨まで一括で任せられるメリットがあります。
自治体への依頼より費用が高くなりますが、人間と同じように丁寧に見送れるため、大切な愛犬をしっかり見送りたい場合には最適な方法です。
それぞれの特徴を理解して、ご自身やご家族の希望に沿った方法を選びましょう。
自治体・マイクロチップ登録機関に死亡届を提出(優先:死亡から30日)
犬は狂犬病予防法第4条※1 により、お住まいの市町村への登録と予防注射が義務付けられています。
この登録の抹消のために、自治体に死亡を知らせる必要があります。
また、2022年6月からは犬・猫にマイクロチップの装着が義務付けられました。
こちらはマイクロチップ登録機関に死亡届を提出する必要があります。
【30日以内に知らせないとどうなる?】
死亡届の提出を怠った場合、20万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
マイクロチップの登録抹消も、忘れないうちに自治体への申請と一緒に行うようにしましょう。
【マイクロチップ登録機関への連絡のみで済むケースもある】
船橋市では令和5年4月1日より以下の特例制度が設けられています。
船橋市では、令和5年4月1日から、マイクロチップ情報の登録または変更登録を完了した犬の飼い主は、狂犬病予防法の登録をしたものとみなし、窓口での鑑札の交付手続きを不要とする狂犬病予防法の特例制度を適用します。
「犬の登録と注射」船橋市
このように、特例制度を適用している市町村ではマイクロチップ登録を行うことで自治体への登録・鑑札の交付を受ける工程をスキップできるようになりました。
この場合、死亡届の提出はマイクロチップ登録機関にのみ行い、自治体への提出は不要になります。
注意点として「お住まいの自治体が特例制度を適用していない」「特例制度が適用される以前に自治体で登録手続きを行った」などの場合は従来と同じく自治体にも死亡届の提出が必要な場合があります。
上記のケースはあくまで船橋市のケースのため、詳しい情報はお住まいの自治体のホームページを確認、もしくは問い合わせて確認することをおすすめします。
保険の解約(忘れないうちに対応:できるだけ早めが良い)
保険に加入していた場合は解約の手続きを行いましょう。
解約に関する手続きは保険会社に応じて対応が違うので、事前に問い合わせるのがおすすめです。
手続きの際は愛犬が亡くなった日を確認されることが多く、ペットちゃんが亡くなったことを証明できる書類の提出が必要な場合もあります。
【解約後にすることは?】
保険会社によっては解約後も一定の期間内に申請すれば補償金を支払ってくれることもあります。
保険を解約する前に、愛犬を見送るまでに掛かった治療費の補償の申請漏れがないか確認しましょう。
あわせて、失効までの保険料の支払い(日割り計算で請求されることが多い)など、不明点があれば保険会社に確認するようにしましょう。
まとめ
犬が亡くなった場合は以下の流れでお見送りを進めます。
1:死亡確認をする
2:死後硬直する前に遺体を安置する
3:お見送り方法を決める・依頼先へ問い合わせる(安置から2~3日以内)
4:火葬・埋葬を実施
5:自治体・マイクロチップ登録機関に死亡届を提出(死亡から30日以内)
流れを知っておけば愛犬を安心してお見送りできます。
辛いかもしれませんが、大切な家族が安心して旅立てるよう、きちんと見送ってあげましょう。