「自分が沢山愛情を注いで育てたペットだから、最期までしっかり面倒をみてやりたい」「大切な時間を一緒に過ごしたペットを大自然に返したい」そうお思いの飼い主様には「散骨」での供養がおすすめです。
散骨とは火葬した後ペットちゃんのお骨を砕き希望の場所に撒く供養の方法です。主に人間のための供養方法でしたが、近年ではペットちゃんを対象にサービスを提供する業者も増えています。とはいえ、「本当に散骨を選んで大丈夫なのか」「好きな場所に散骨していいのか」という不安があるかもしれません。
そこで今回は、ペットちゃんの遺骨を散骨するメリットや、散骨する場所について解説します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
散骨するメリット
ペットちゃんの遺骨を散骨するメリットは、主に3つあります。
①諸費用を抑えることができる
一般的な供養には納骨・お墓の建立・維持に合計数十万円の費用が発生します。散骨の場合、維持費が掛かることはありません。さらに、ご自身で散骨される場合は、さらに諸費用を抑えることができます。
②お墓参りをする必要がなくなる
お墓を建てたらお墓参りや管理など定期的に通う必要があります。散骨ならお参りの必要はありません。遠方に住んでいる方や、身体的不自由がある方にとっては負担の少ない供養なのです。
③特別な許可や届け出が必要ない
散骨を行う際に自治体への手続きや許可書の提出は必要ありません。ただし、周辺の方に迷惑をかけないことが大切です。
例えば、散骨前に遺骨を一片2㎜以下のパウダー状に砕き(粉骨)、骨と判別できない大きさにする必要があります。遺骨と判断できる状態で散骨すると「死体遺棄罪」に罰せられることを覚えておきましょう。
散骨の流れ
では、実際にどのような流れで散骨が行われるのでしょうか?
①火葬
火葬して遺骨にしてもらいます。料金は生前のペットちゃんの体重で決まります。
②粉骨
火葬後、お骨を細かく小さな粉末に砕きます。法律に触れる恐れがあるため、散骨する場所を問わず必ず行うようにしましょう。オプションで依頼できる業者もありますが、ない場合は民間業者へ依頼することもできます。
③散骨
粉骨が完了したら、希望の場所で散骨を行います。場所によっては飛行機や船の予約が必要になるので要注意です。移動の手配や散骨の儀式を行う代行業者もいるため、必要に応じて利用してみましょう。
このように、ペットちゃんの散骨にそこまで複雑な手続きはありません。重要なのは「どこで散骨を行うか」です。
散骨できる場所
散骨する場所は基本的に自由ですが「大自然に返してあげたい」「思い出の場所に散骨したい」という飼い主様がやはり多いです。ただし、許可を得た場所で行うのがマナーです。場所を選ぶ際には注意しましょう。
海(海洋散骨)
生命の起源である海に返してあげることで供養します。パウダー状の骨を水に溶ける紙に包み、ボートやクルーザーで移動しそのまま海上で散骨します。
山林(樹木葬)
海と同様、大自然に返す供養方法として「山林での樹木葬」があります。粉骨したパウダー状の遺骨をそのまま樹木や野山に散布する方法であり、
自宅の庭
ご自宅のお庭は最もお手軽な散骨場所の一つです。お花の咲いたプランターに散骨するケースもあります。ペットちゃんが大好きだった香りのお花や、いつも眺めていたお庭があれば、そこに撒きましょう。愛するペットちゃんをいつでも身近に感じることができますし、なにより住み慣れた場所ならペットちゃんも安心できるはずです。
一緒に訪れた旅先
お気に入りのボールで遊んだビーチや、ハイキングで一緒にお昼ご飯を食べた山……愛するペットちゃんと訪れた旅先には、深い思い入れがあることでしょう。許可を得た場所であれば、そんな場所でも散骨できます。場所によっては移動コストがかかりますが、飼い主様との思い出が詰まった場所で眠れたら、ペットちゃんもきっと喜ぶでしょう。
このように、埋葬場所を自由に決めることができるのが散骨の魅力です。ペットちゃんの一生を象徴するような供養方法なので、飼い主様自身の気持ちの整理も進みやすいのではないでしょうか。
散骨できない場所
一方で、以下の場所で散骨することは禁止されています。事前に必ずチェックしておきましょう。
他人の所有する土地
所有者の許可が無い土地には散骨できません。粉骨せずに散骨するのもご法度ですので、十分注意しましょう。
散骨が禁止されている地域
日本には、散骨自体の禁止や規制を設けている自治体があります。散骨事業者と地元住民とのトラブルを避けるために、「散骨禁止条例」を定め厳しく取り締まっているのです。実際に、以下の自治体が散骨に対して規制を設けています。
散骨の禁止や規制を設けている自治体
北海道長沼町、北海道七飯町、北海道岩見沢市、長野県諏訪市、埼玉県秩父市、埼玉県本庄市、静岡県御殿場市
以上の自治体では、散骨の許可を得ることができません。それ以外の地域であっても、念のために自治体に問い合わせて確認することが大切です。
漁業が盛んな場所
漁業が盛んな場所での散骨もしてはいけません。漁業法第143条に「漁業権又は漁業組合の組合員の漁業を営む権利を侵害した者は、二十万円以下の罰金に処する」と定められています。沿岸から離れた養殖場や漁場もあるため、油断は禁物です。海洋散骨をご検討される際は「地元漁師の漁業権を侵害していないか」を慎重に確認しておきましょう。
散骨する際のルール・マナー
ここまで法律上の禁止行為について述べてきましたが、散骨における暗黙のルールやマナーも他に存在します。
ペットちゃんの散骨は一度きりです。誰もが気持ちよくお見送りするためにも、ルールやマナーを必ず守りましょう。
散骨を選ぶ理由は?
「飼い主様以外も納得した上で散骨する」です。散骨は立派な葬儀です。ただ、供養の方法が独特になるので「辛いからやめてほしい」「それでは成仏できない」と、家族から反対意見が出ることもあります。動物は人間のように意思を伝えられないため、「どのような供養ならペットが喜ぶのか」を話し合うことが大切なのです。
死後に揉めていてはペットちゃんも悲しむので、見送る人全員の心情や宗教的感情に配慮するのがマナーです。「それでも散骨して供養したい」という理由が見つかるまで相談しましょう。
周囲の人に迷惑をかけない
散骨は誰も嫌がらない場所にし、自然に返らない副葬品(ビニールやセロファン)などは撒かないよう気を付けましょう。また、先程述べた散布できない場所は避け、私有地の場合は所有者に必ず許可を取ってください。
加えて、散骨していることを良く思わない人にも配慮して、現地へは軽装で向かい、喪服は避けるようにしましょう。
まとめ
遺骨の供養は、ただの葬儀の一工程ではありません。飼い主様がペットちゃんを思って行う、とても尊い儀式です。
ペットちゃんの安らかな旅立ちのお手伝いすることは、胸に抱えた悲しみを軽くするために役立ちます。散骨を検討される方はそのメリットを最大限発揮できるよう、ぜひ入念な準備を進めていきましょう。