
カメは長寿のイメージがありますが、飼育環境によっては体調を崩して、そのまま亡くなってしまうことも多いです。
いつもはのんびりした仕草で私たちに癒しを与えてくれるからこそ、体調を崩して苦しんでいるカメを目の前にしたとき、冷静に対処してあげられる方は少ないはず。
大切なカメに長生きしてもらうためには、いざと言う時には慌てずに適切な判断ができ、獣医さんに診せてあげられることが大切。
そのために、まずはカメの病気や亡くなる前の様子を知っておくようにしましょう。
このページではカメが死ぬ前の様子や、後悔なくお見送りする方法をご紹介します。
カメの飼育環境や、これからの過ごし方を見直すきっかけになれば幸いです。
この記事の監修者

高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
カメが死ぬ原因になる病気

カメは水槽内の環境の悪化やウイルス、カメ自身の生態の影響で病気になることがあります。
まずはカメの異変に気付き、それから対処するようにしましょう。
水カビ病
主に水中で暮らすカメがかかる病気で、皮膚や甲羅に白っぽいモヤのようなカビが生えます。
水質の悪化や日光浴不足などが原因でカメの免疫力が下がった場合に症状が発生します。
予防のために水槽の中をきれいに保って、水温を25度以上に上げることでカビの原因菌を殺菌することに加えて、患部が広い場合は獣医さんに診てもらってください。
口のトラブル
カメは口のトラブルで弱ることもあります。
【口内炎】
カメは細菌やウイルス・胃腸炎が原因で口内炎ができることがあります。
ウイルスが原因の口内炎はほかのカメに感染してしまうリスクもあります。
また、症状が進むと食欲を無くして衰弱、顎が変形するなど命に関わることもあります。
「たかが口内炎」と思わず獣医師に診てもらうようにしましょう。
【不正咬合】
クチバシの伸び過ぎや、噛み合わせがズレると不正咬合になります。
カメはクチバシでエサをちぎって食べるため、食事を取りづらくなり弱っていきます。
動物病院で余分なクチバシをトリミングしてもらうことが対策になります。
また、日頃から固いエサを与えてクチバシを削っておくことが挙げられます。
肺炎
カメは肺炎にかかりやすい生き物です。
カメには水中で生活する種類と陸で生活する種類がいますが、どちらでも警戒が必要です。
肺炎の主な原因は「細菌」「ウイルス」「真菌」です。
菌やマイコプラズマ感染症の進行などによって肺炎になるケースや、不適切な食事、飼育環境が原因で肺炎になることもあります。
「食欲がない」「ずっと目をつぶっている」「苦しそうに口で呼吸をする」などの症状が出たら、獣医師に相談しましょう。
尿路結石
体内の結石が原因で起きる病気です。
結石が多いと「食欲がなくなる」「便秘」「尿のにおいが強い」などの症状が出て、最悪の場合死に至ることもあります。
卵詰まり
カメが元気を無くして食欲がない場合は、体内で卵詰まりを起こしている可能性があります。
放っておくと内蔵が圧迫され排泄できなくなり、腎不全の原因となることもあるため、早めの治療が不可欠です。
カメは単独飼育でも無精卵を産むため、卵詰まりの兆候を見逃さないように普段からよく様子をみてあげることも大切です。
熱中症
カメにとって日光浴は大切ですが、強い日差しの中での放置は危険です。
また、室内でもクーラーをつけず暑い部屋にいると熱中症になってしまうこともあります。
熱中症になると「口呼吸」「口から泡を吹く」「下痢や嘔吐」などの症状がみられます。
熱中症が疑われる場合は、涼しい場所に移動させ水などでカメの体を冷やしてあげましょう。
低温
カメは高温だけでなく低温にも弱い動物です。
気温が低い日はヒーターなどで適温を保つようにしてあげましょう。
低温になると「呼吸や消化が正常にできない」「免疫力の低下」「動かない」「仮死状態になる」などの症状が出て、そのまま死に至ることもあるので気をつけましょう。
怪我
野生動物に襲われたり、交通事故にあって亡くなることも考えられます。
また、室内でも目を離している間に怪我をする場合もあります。
ケージから出す場合は注意が必要です。
カメが死ぬ前に見せる症状

カメが死ぬ前に見せる症状をご紹介します。
これらの症状が現れたら、様子を見ながら獣医師に診てもらうようにしてください。
【食欲低下】
冬は食欲がなく元気がない場合が多いです。
しかし、それ以外で食欲や元気がないときは体が弱っているサインかもしれません。
いつもあげているエサ以外のものをあげて、食べるかどうか確認しましょう。
それでも食欲がない場合は、一度獣医師に診てもらうようにしましょう。
【変な鳴き声をする】
カメは声帯がないため鳴きませんが、「ヒュー」「キュッ」と音を発することもあります。
このような音は、アゴをこすりあわせる音や呼吸音など問題ない場合も多いですが、病気が原因の場合もあります。
例として、口呼吸をしている場合や、鼻水が出ていて鼻が鳴っている可能性もあります。
【体重減少】
カメは死ぬ前に体重が急激に減ります。
食欲が減っている場合は気付きやすいですが、エサを食べているのに体重が落ちている場合もありますので、日々の体重管理も大切です。
【呼吸が苦しそう】
口を開けた苦しそうな呼吸は、呼吸器官に異常があるサインかもしれません。
一刻も早く獣医師に診てもらってください。
【動かない】
カメは死ぬ前に動かなくなります。
また、水温が下がっている場合は冬眠をしかけている可能性もあります。
まずは水槽内の環境を調べてみましょう。
獣医さんに診てもらう
カメがこれまで紹介したような症状を見せた場合は獣医さんに診察してもらって対処方法を教えてもらうのが一番です。
しかし、カメを診てくれる動物病院が近くにない可能性があるため、動物病院を事前に探しておくことが大切です。
加えて、大型のリクガメは体重が数十kgを超えるため運べなかったり、小型のカメであっても診察を嫌がって首を引っ込めてしまうなど、病院に連れていくまでの道筋に加えて、診療を受けるまでのことも考える必要があります。
そのため「できる限り近場で」「カメの診察に慣れた獣医さんが居る」ことも判断材料に加えるのがおすすめです。
カメとのお別れまでにすること

ペットちゃんとはいつかお別れの時が来ます。
お別れは辛いですが、最後まで愛情を持って送り出してあげましょう。
この章では、大切なペットちゃんとのお別れの方法ついてご紹介します。
①死亡確認を行う
カメは気温が下がりすぎると仮死状態になることもあります。
仮死状態なら頭や手足に触ると反応します。
まずは死亡確認をするようにしましょう。
また、ヒーターを活動可能な温度に設定して確認するのも判断方法のひとつです。
それでも反応が無かったり、手足が甲羅からだらんと出ている場合は亡くなっている可能性が高いです。
判断できない場合は、獣医師に確認してもらうのも手です。
②体を清める
カメが亡くなったら、体を清潔な布やガーゼで優しく拭いてあげましょう。
体液が溢れてくることもありますので、こまめに確認してきれいにしてあげてください。
濡れている部分があると菌が繁殖しやすくなるため、遺体が傷むスピードも速くなります。
そのため、乾いたタオルで水分を拭き取ることも大切です。
すぐにお見送りしない場合はカメが入る大きさの箱にペットシーツを敷いて、安置します。
遺体の腐敗を遅らせるため、遺体を保冷剤で冷やすことも忘れないようにしましょう。
③お見送り方法を決める
遺体をきれいに拭いて冷やしている場合、およそ2日ほどはきれいな状態で遺体を残せます。
その間に大切なカメをどのように見送りたいかを決めましょう。
カメのお見送り方法一覧

お見送り方法とは、具体的には葬儀・供養方法を決めることです。
【土葬】
私有地に穴を掘り、遺体を埋める方法です。
筆者は子供のころ捕まえてきたイシガメが亡くなった際に自宅の庭に埋めて供養してあげました。
それからおよそ10数年が過ぎましたが、今でも埋めた場所の近くを通るとカメのことを思い出します。
このように亡くなった後もその子を身近に感じられる供養方法のため、お庭など埋められる場所があり、一緒に暮らした思い出を大切にしたい方におすすめしたい方法です。
しかし、土葬を行う際は臭いや害虫の発生などを防ぐために穴を深く掘る必要があります。
ただし、外来種や感染症で亡くなった疑いがあるカメは環境保全のために別の方法で供養してあげましょう。
【火葬】
固い甲羅と爪を持ったカメも、専門のペット火葬業者に依頼すれば火葬してあげられます。
お見送りに加えて、残ったお骨は霊園への埋葬やお家での手元供養など、要望にあわせた供養が行えるメリットがあります。
カメは長生きなペットだからこそ、最後までしっかりと見送ってあげてください。
より詳しい安置からお見送りまでの流れはこちらで紹介しています。
してはいけない供養方法
供養方法は正しい方法で行わないと、法律違反で罰せられることがあります。
【私有地以外の場所で埋葬する】
動物の遺体は法律上、廃棄物扱いです。
そのため、他人の敷地や公共の場に土葬することは不法投棄として法令違反となります。
また、自分で火葬を行うことも廃棄物処理法の「第四章 雑則」のうち、第十六条の二「何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない」に抵触します。
愛するペットちゃんを後悔なく見送るためにも、正しい方法で供養してあげましょう。
*参考サイト
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
【水葬】
カメを自然に還してあげるために、遺体を川や池に流すことも不法投棄として法令違反です。
また、飼育されていたカメの病原菌が生態系に悪影響を与える可能性があるため無許可で水葬を行うこともやめましょう。
関連して「自然に返してあげたい」と飼育中に弱ったカメを逃がすことも厳禁です。
動物愛護管理法の「虐待や遺棄の禁止」に抵触し、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
なにより、せっかく迎え入れた家族は、最後までしっかりと世話をしてあげてください。
*参考サイト
「動物愛護管理法 虐待や遺棄の禁止」環境省
【後悔するお見送り】
自治体によりますが、体が小さいカメは可燃ゴミとして出すこともできます。
お金もかからず、所定の場所に出すだけでお別れできますが、ずっと一緒に過ごしてきた家族をゴミとして捨ててしまうことは、今は良くても後から後悔することになるかもしれません。
最後のお別れだからこそ、家族で話し合ったり他の人がどのようにお別れをしたのかネットで調べたりと後悔がない方法を選べるようにしてください。
大切なカメの供養方法について考えたい場合は、こちらのコラムを参考にしてください。
まとめ
カメは長生きする生き物ですが、病気には注意が必要です。
体調が悪そうな場合はもちろん「口呼吸をしている」「呼吸音がする」など、いつもと違う様子の場合は注意してあげましょう。
体調を崩し、死が迫っているサインの可能性があるためです。
また、死ぬ前に見せるサインは目に見えるものだけではなく、体重の減少や食欲の低下などちょっとした変化に隠されている場合も多いです。
様子がおかしいなど気になることがあれば、早めに獣医さんに診てもらうようにしましょう。