亀は長寿のイメージがありますが、飼育環境によっては体調を崩して、そのまま亡くなってしまうことも多いです。
いつもはのんびりした仕草で私たちに癒しを与えてくれるからこそ、体調を崩して苦しんでいる亀を目の前にしたとき、冷静に対処してあげられる方は少ないはず。
大切な亀に長生きしてもらうためには、いざと言う時には慌てずに適切な判断ができ、獣医さんに診せてあげられることが大切。
そのために、まずは亀がかかりやすい病気や亡くなる前に見せる症状を知っておくようにしましょう。
このページでは大切な亀に長生きしてもらう方法と、亡くなった場合に後悔なくお見送りする方法をご紹介します。
亀の飼育環境や、これからの過ごし方を見直すきっかけになれば幸いです。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
亀の寿命はおよそ30年ほど
「亀は万年」という言葉があるように、一般的に亀は長く生きるというイメージがあると思います。
しかし、実際はどのくらい生きるのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
亀の寿命は種類によりますが、平均で30~50年ほどです。
きちんと飼育環境を整え体調管理をすることで寿命が伸びるともいわれており、長い場合は100年以上生きた亀もいます。
亀を長生きさせる秘訣
亀は野生よりも、ペットとして飼育されている場合のほうが長生きするといわれています。
しかし、ペットとして飼育する場合は、亀の特性を理解してきちんと管理しなくてはいけません。
この章では亀が長生きする秘訣をご紹介します。
気温の管理
亀にとって気温や湿度はとても重要です。寒すぎると冬眠してしまい、暑すぎると熱中症になってしまうことがあります。
亀にとっての適温は一般的に23~28℃とされています。
亀の種類によっても異なります。
その亀に合った気温を保てるように、夏はエアコン、冬(冬眠させない場合)はヒーターを使って温度調節してあげましょう。
冬眠させるか検討
亀の種類によっては、冬眠させることでエネルギー消費が軽減でき長生きさせることができます。
しかし、年齢が低い亀や病気の亀にとっては、冬眠することが負担となりそのまま亡くなってしまうこともあります。
そのため、その亀によって冬眠させたほうがいいか、十分に検討するようにしましょう。
日光を浴びさせる
日光浴を適度にすることも亀にとっては大切です。
日光浴をすることで「ビタミンDを作り出す」「体温を上げる」「体を乾燥させる」などの効果があり、健康に生きるために必要な役割があるからです。
水を清潔に保つ
亀はきれい好きな動物です。そのため、水槽の水が汚いとストレスを感じてしまいますし、菌が繁殖して病気になってしまう可能性も高くなります。
また、食べかすや排泄物が水に入ったままだと嫌な臭いの原因にもなります。
こまめに水槽の水や砂利が汚れていないかを確認して、水換えをするようにしましょう。
ケージを掃除する
月に一回は亀をゲージから出して、大掃除するようにしましょう。
カビなどの細菌が付着している可能性がありますので、きれいに洗い流しましょう。
ストレスを与えない
亀は基本的におとなしく穏やかなので、ついスキンシップをとりたくなります。
しかし、過度なスキンシップは亀にとってはストレスになってしまいますので、嫌がる素振りを見せたら、すぐにケージに戻してあげましょう。
亀が心地よいと感じる距離感で触れ合うことが大切です。
亀は食中毒の原因となるサルモネラ菌を持っていることがあります。
スキンシップの後は、必ず石鹸で手を洗ってください。
亀が亡くなる原因になる病気
この章では亀が死に至る原因についてご紹介します。
どのような原因があるか知っておくことで、事前に防ぐことやすぐに対応することができ、ペットちゃんの命を救うことができます。
肺炎
あまり知られていませんが、亀は肺炎にかかりやすい生き物です。
亀には水辺で生活する種類と陸で生活する種類がいますが、どちらであっても警戒すべき病気です。
肺炎の主な原因は「細菌」「ウイルス」「真菌」です。
これらの菌やマイコプラズマ感染症の進行などによって肺炎になるケースや、栄養不足に繋がる不適切な食事、温度・湿度といった飼育環境が原因で肺炎になってしまうこともあります。
「食欲がない」「ずっと目をつぶっている」「苦しそうに口で呼吸をする」などの症状が出たら、獣医師に相談しましょう。
尿路結石
形成された結石が原因で、障害が起きる病気です。
結石が多いと「食欲がなくなる」「便秘」「尿のにおいが強い」などの症状が出て、最悪の場合死に至ることもあります。
口内炎
細菌やウイルス・胃腸炎が原因で口内炎ができることがあります。
ウイルスが原因の口内炎は死に至ることもあり、ほかの亀に感染してしまうリスクもあります。
「たかが口内炎」と思わず獣医師に診てもらうようにしましょう。
卵詰まり
亀が元気を無くして食欲がない場合は、体内で卵詰まりを起こしている可能性があります。
放っておくと内蔵が圧迫され排泄に支障をきたしたり、腎不全の原因となることもあるため、早めの治療が不可欠です。
亀は単独飼育でも無精卵を産むため、卵詰まりの兆候を見逃さないように普段からよく様子をみてあげることも大切です。
熱中症
亀にとって日光浴は大切ですが、強い日差しの中での長時間の放置は危険です。
また、室内でもクーラーをつけず高温な部屋にいると熱中症になってしまうこともあります。
熱中症になると「口を開けて呼吸する」「口から泡を吹く」「下痢や嘔吐」などの症状がみられます。
熱中症が疑われる場合は、涼しい場所に移動させ水などで亀の体を冷やしてあげましょう。
低温
亀は高温だけでなく低温にも弱い動物です。
気温が低い日はヒーターなどで適温を保つようにしてあげましょう。
また、室内は適温でも床が冷えていて、亀の体が冷えてしまう場合もあります。
低温になると「呼吸や消化が正常にできない」「免疫力の低下」「動かない」「仮死状態になる」などの症状が出て、そのまま死に至ることもあるので気をつけましょう。
怪我
日光浴で外に出ている際に動物に襲われたり、交通事故にあって亡くなることも考えられます。
また、室内でも目を離している間に怪我をする場合もあるため、ケージから出す場合は注意が必要です。
亀が死ぬ前に見せる症状
この章では亀が死ぬ前に見せる症状をご紹介します。
これらの症状が現れたら、様子を見ながら獣医師に診てもらうようにしてください。
また、これからあげる症状以外でも異変に気付いたら、獣医師に相談しましょう。
食欲低下
冬は食欲がなく元気がない場合が多いです。
しかし、それ以外でいつもより食欲や元気がないときは体が弱っているサインかもしれません。
いつもあげているエサ以外のものをあげて、食べるかどうか確認しましょう。
それでも食欲がない場合は、一度獣医師に診てもらうようにしましょう。
変な鳴き声をする
亀はほとんど鳴くことはありませんが、「ヒュー」「シュッ」といった音を発したり「カチカチ」と口を鳴らすこともあります。
このような鳴き声や音は、病気が原因のこともあり、死ぬ前兆である可能性も考えられます。
体重減少
亀は死ぬ前、体重が急激に減ることもあります。
食欲が減っている場合は気付きやすいですが、エサを食べているのに体重か下がっているという場合もありますので、日々の体重管理も大切です。
苦しそうな呼吸
口を開けた苦しそうな呼吸は、呼吸器官に異常があるサインかもしれません。
一刻も早く獣医師に診てもらってください。
動かない
死ぬ前は元気がなく動かなくなります。
詳しく獣医師に診てもらうようにしましょう。
気温や水温が下がっている場合は冬眠をしている可能性もありますので、体を触って反応があるか調べましょう。
獣医さんに診てもらう
亀がこれまで紹介したような症状を見せた場合は獣医さんに診察してもらって対処方法を教えてもらうのが一番です。
しかし、亀を診てくれる動物病院が近くにない可能性があるため、動物病院を事前に探しておくことが大切です。
加えて、大型のリクガメは体重が数十kgを超えるため運ぶのが大変だったり、小型の亀であっても診察を嫌がって首を引っ込めてしまうなど、病院に連れていくまでの道筋に加えて、診療を受けるまでのことも考える必要があります。
そのため「できる限り近場で」「亀の診察に慣れた獣医さんが居る」ことも判断材料に加えるのがおすすめです。
亀とのお別れ
ペットちゃんとはいつかお別れの時が来てしまいます。
数十年ともに過ごした亀とのお別れは精神的に辛いですが、最後まで愛情を持って送り出してあげましょう。
この章では、大切なペットちゃんとのお別れの方法ついてご紹介します。
①獣医師に診断してもらう
亀は、特に冬場は仮死状態になることもあります。
仮死状態の場合は頭や手足を軽く突くと動きます。
死んだと決める前に動くかどうか確認するようにしましょう。
また、ヒーターを活動可能な温度に設定して動き出すかどうかを確認するのも判断方法のひとつです。
上記を試しても反応が無かったり、手足が甲羅からだらんと出ている場合は亡くなっている可能性が高いです。
どうしても死んでしまったか自分で判断できない場合は、獣医師に確認してもらってください。
②体を清める
亀が亡くなったら、体を清潔な布やガーゼで優しく拭いてあげましょう。
体液が溢れてくることもありますので、こまめに確認してきれいにしてあげてください。
濡れている部分があると菌が繁殖しやすくなるため、遺体が傷むスピードも速くなります。
すぐに供養しない場合は亀が入る大きさの箱にペットシーツなどを敷いて、安置します。
遺体の腐敗を遅らせるため、遺体の横に保冷剤などを添えて冷やすことも忘れないようにしましょう。
③供養する
最近はペット火葬に依頼して、亀を火葬して供養される方も多くいらっしゃいます。
また、プランター葬やご自宅が私有地であれば庭に埋葬される方もいらっしゃいます。
ご自身に合う供養方法を選ぶようにしましょう。
まとめ
亀は犬や猫と違って表情から不調を見ることは難しいですが、よく観察していると「呼吸が荒い」「食欲がない」など行動から調子を崩していることがわかることも多いです。
特に「食欲の低下」や「口から変な鳴き声(音)を出している」という場合は死が迫っているサインかもしれません。
不調に気付いたら、早めに獣医さんに診せるようにしてください。
ペットちゃんとのお別れは寂しく辛いですが、亀は長生きですので最期のことまで考えて飼うことが大切です。
死ぬ前の行動などを事前に知っておくことで、慌てず対応することができ、いざという時にも悔いなくお見送りすることができます。
お別れする際には後悔のないように、納得する形で送り出してあげてください。