ハリネズミが死ぬ前に見せる症状とは?介護や病気・夏眠対策も解説

「飼っているハリネズミが急に死んでしまったらどうしよう」と不安になる飼い主様は多いのではないでしょうか。

飼い主様が、愛するペットちゃんと少しでも長く一緒にいたいと思うは当然のことです。

ハリネズミが死ぬ前に見せる症状を知っておけば、心の準備もできますし、すぐに対処できて命が助かるかもしれません。

このページでは、ハリネズミが死ぬ前に見せる症状、老化のサイン、かかりやすい病気や対策などをわかりやすく解説します。

大切なハリネズミに健康で長生きしてほしい、老後の介護について知りたいという飼い主様はぜひ参考にしてください。

このページでわかること

この記事の監修者

高間 健太郎(獣医師)

高間 健太郎
(獣医師)

大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。

ハリネズミが老衰で死ぬ前の症状と快適な老後のための介護

ハリネズミが死ぬ前に見せる症状とは?介護や病気・夏眠対策も解説

ハリネズミが亡くなる直前には「意識がもうろうとする」「呼吸が弱くなる」「体温が低下する」などの症状が見られます。

この章では、老衰死の前に見られる症状と老化現象について解説し、老後の介護についてもご紹介します。

老衰で死ぬ前の症状

ハリネズミの死期が近いサイン
  • 亡くなる数日前から徐々にエサを食べなくなり急激に痩せる
  • 睡眠時間が増えて一日中眠っているような状態になる
  • 意識がもうろうとして目が虚ろになる
  • 呼吸が不規則になり、だんだんと弱くなってくる
  • 体温が低下して手足から冷たくなってくる
  • けいれんを起こす子もいる

ハリネズミも人も、老衰で亡くなる前に見られる症状はよく似ています。

見守る飼い主様にとっては辛いことですが、老衰で亡くなるハリネズミの最期は眠るように安らかなことが多いようです。

ハリネズミの老化現象とシニア期

ハリネズミも人と同様に、高齢になれば筋力や臓器機能が衰えてきます。

そのため、若い頃と比べると、食が細くなり、運動量も減少、睡眠時間も長くなります。

このような傾向が見られたら老後に備え始めましょう。

外見からでは老化していることがわかりにくいですが、ハリネズミの3歳は人間でいう54歳に相当しシニア期に入ります。

外見や行動にあまり変化が見られない場合でも、3歳という年齢を目途に飼育環境の見直しを行うと良いでしょう。

ハリネズミの年齢人間年齢に換算(概算)
1歳18歳
2歳36歳
3歳54歳
4歳72歳
5歳90歳

老後のために介護の準備をしよう

ペットちゃんの快適な老後の生活のために、ケージ内のバリアフリー化や食事内容の見直しをしておきましょう。

●介護時におすすめの品

ペットシーツ介護時の床材はペットシーツがおすすめ
エサや水をこぼしてもすぐに取り替えられるので衛生的
高さの低いエサ皿、水皿筋力が衰えても低い皿なら食事がしやすい
スポイト自力での食事が難しくなった際に、ふやかしたフードやハリネズミ用ミルク(シニア期の栄養補給用)を与えるのに便利

●ケージ内の環境とエサの見直し

回し車筋力を衰えさせないために使用する場合はそのままでOK
すでに足腰が弱くて動き回るのが辛そうであれば事故を防ぐために撤去する
砂場中には砂を食べる、砂で眼球を傷付けてしまう子がいる
呼吸器系疾患の可能性も示唆されているため、体調によっては撤去する
バリアフリー化障害物や段差になるものを減らし動き回りやすい環境にする
床材の見直し衛生的に保つためペットシーツにするのがおすすめ
ペットシーツの下にダンボールやタオルを敷くなど床からの冷えを防ぐ
エサの見直し歯が抜けて硬いフードが食べられなくなることがあるため、柔らかくふやかしたフードに変更する

ハリネズミが突然死する原因とハリネズミに多い病気・事故

ハリネズミは突然死が多い動物でもあります。

ハリネズミの死因やかかりやすい病気を知っておけば、突然死を防ぎ長生きさせることができるので覚えておきましょう。

ハリネズミが突然死する原因

●ストレス

ハリネズミはとてもストレスに弱く繊細な動物です。

ストレス過多の状態が続くと、免疫力が低下して病気になりやすくなるばかりか、心不全発症のリスクも高くなります。

大きな音や急に触るなど、ペットちゃんを驚かせるようなことはやめましょう。

また、ケージ内は暑すぎず寒すぎない適度な温度(24~29度)と湿度(40%前後)を保つようにしましょう。

何かに怯えたり大きなストレスを抱えると、警戒心から針を逆立てる仕草や「フシュー!」と鼻息を荒げる仕草が見られます。

ストレスのサインが見られた場合は接し方や飼育環境を見直してください。

●化学物質

シンナーなどのきつい臭いで、ハリネズミが死んでしまったという事例もあります。

家でスプレーなどを使用する場合は換気して、部屋に臭いが充満しないように気を付けましょう。

また、殺虫剤は注意書きをよく読み、使用するかを判断してください。

ハリネズミに多い病気や事故

アニコム損保の保険契約を行った人を対象にした調査によると、ハリネズミの保険の請求割合で圧倒的に多いのは「皮膚疾患」です。

次いで「全身性の疾患」、「消化器疾患」、「腫瘍」と続きます。

これらの病気は、最悪の場合ハリネズミを死に至らしめることもあります。

引用元)アニコム「家庭どうぶつ白書2023」(アニコムホールディングス株式会社)

*アニコム損保のペット保険「どうぶつ健保」の保険金支払い実績、同社が実施したアンケート調査の結果などに基づいたデータ

*「請求割合=保険金支払いのあったどうぶつの数/保険に契約しているどうぶつの数」と定義

*あくまで1年間のうちに1回でも保険金支払いがあった場合は1としてカウント

●ダニ

ハリネズミはダニ症から皮膚疾患になり、死んでしまうケースがあります。

ダニ対策
  • ケージ内に砂場を用意する
  • 定期的に36度程度のぬるめのお風呂に入れてあげる
  • 濡れタオルなどで体を拭いてあげる など

●ハリネズミふらつき症候群(WHS)

ハリネズミふらつき症候群とは、その名の通り歩くとふらつき最終的には全身が動かなくなるハリネズミ特有の神経系の病気です。

Point!

発症してから1~2年以内に亡くなる例が多く、原因不明で予防法や治療方法も確立されていない

●癌、腫瘍

ハリネズミは腫瘍ができやすい動物で、高齢のハリネズミが癌で死んでしまうケースも多いです。

病気の予防対策
  • ハリネズミの体調や行動を毎日観察して、異変にすぐ気付けるようにする
  • 異変があればすぐに動物病院を受診する
  • 定期健診を受ける

●誤食・誤飲

誤飲・誤食によって中毒や消化不良を起こし、重篤な消化器疾患になってしまうことがあります。

齧ると危険なものはケージ付近に置かないようにし、部屋を散歩させる場合は周囲を片付けて安全を確保しましょう。

Caution

齧ると危険な物

電気コード類、薬、化粧品、中毒性のある植物、設置型の殺虫剤 など

小さな異変に気付くための確認ポイント

突然死を防ぐためには、些細な異変にもすぐに気付けるように、日頃からペットちゃんをしっかりと観察しておくことが大切です。

●食べる量が減っていないか

食べることが大好きなペットちゃんでも、死ぬ前は急激に食欲が落ちることがほとんどです。

ある日突然、食欲がなくなったという場合は注意が必要です。

他にも病気や温度変化などのストレス、餌に飽きたことをきっかけに食欲不振になることもあります。

早めに病院で相談しましょう。

●急激な体重の増減がないか確認する

体重が急激に増減していたら体調不良のサインかもしれません。

体重は定期的に小数点以下まで表示できる体重計で測定し、適正体重をキープしましょう。

●排泄物に異常はないか

下痢が続く、通常と違う色の便が出るなどペットちゃんの体調を排泄物から知ることもできます。

日頃から排泄物をチェックし、異常に気付いたら病院で診てもらい、対策方法についても相談すると良いでしょう。

ハリネズミは夏眠する生き物!仮死状態と死亡の見分け方

ハリネズミには、冬眠する種類としない種類があります。

現在、日本で飼育・販売が許可されているハリネズミはヨツユビハリネズミで、冬眠はしませんが夏眠はすることがあります。

ケージ内の温度が30度以上になると夏眠して仮死状態になることがあり、これを死亡していると勘違いしてしまったら大変です。

夏眠と死亡の見分け方

ヨツユビハリネズミは食べ物が少なくなる乾季を乗り切る対策として夏眠をします。

平常時と比べて呼吸数・心拍数をかなり少なくすることで体を省エネ状態にするのです。

●仮死状態と死亡の見分け方

①涼しい部屋に移動させ体の状態を確認する

まずは、ハリネズミを涼しい部屋に連れていきましょう

ハリネズミは体が小さいので、亡くなったらすぐに死後硬直が始まります。

手足に優しく触れて、硬直していないか、曲げ伸ばしができるかを確認しましょう。

加えて、お腹を触ってみて柔らかい弾力があれば仮死状態の可能性が高いです。

②ひげの反応を見る

ひげにそっと触ってみて、わずかな反応でもあれば、生きていることがわかります。

③呼吸数を確認する

通常時の呼吸数は25~50回/分ですが、仮死状態では呼吸数が数回/分ほどになります。

約1分間ハリネズミをじっと観察して、お腹が動くかを確認しましょう。

夏眠の場合すぐに動物病院を受診するのが安心

仮死状態になると体温はかなり低下するものですが、夏眠の場合は外気温に影響され高くなることも考えられます。

体温が極端に低下する冬眠の場合なら、ゆっくりと体をあたためることで目覚めさせることができるようです。

しかし、夏眠の場合は体をあたためるべきか冷やすべきかの判断が難しいため、すぐに動物病院を受診するのが賢明です。

体温が極端に高いなら、熱中症の可能性もあるため応急処置として体を冷やしながら病院へ行きましょう。

濡らして冷やしたタオルなどをビニール袋に入れ、それで体を包むように冷やします。

急激な温度変化はハリネズミにとって負担になるので、必ずゆっくりを心掛けてください。

目が覚めたとしても油断せず、はちみつを溶かした水を与えてエネルギー補給を行い、獣医師に診せましょう。

Caution!

夏眠はハリネズミの体に多大な負担をかけることになり、最悪の場合そのまま死んでしまうこともあります。

そもそも夏眠させないように、ケージ内は適切な温度・湿度を保ちましょう。

熱中症や低体温症の可能性もある

夏場には、夏眠ではなく熱中症になるケースもあります。

熱中症の場合、体温の上昇とともに呼吸が荒くなりヨダレが出て、酷い場合にはけいれんを起こして死に至ることもあります。

熱中症の対処方法
  • 冷やした濡れタオルをビニール袋に入れ、それをハリネズミの体に当ててゆっくりと冷やします。直ちに動物病院を受診しましょう。

冬場に冬眠しているような状態になった場合、低体温症の可能性があります。

動きが鈍くなったり、けいれんしている様子が見られたら要注意です。

低体温症の対処方法
  • 36度ほどに調整した湯たんぽやペットヒーターでハリネズミの体をゆっくりとあたためます。直ちに動物病院を受診しましょう。

死ぬ前に一時的に元気になる現象の解説と死後の安置方法

弱っていたハリネズミが亡くなる直前に急に回復したような姿を見せることがあります。

元気になったと嬉しくなりますが、それは一時的なもので、その後に亡くなってしまうことが多いです。

中治り(なかなおり)現象とは?

中治り(なかなおり)現象とは、死期が迫っている人が一時的に元気な状態になることです。

欧米では「last rally(ラストラリー)」と呼ばれ、世界的にも知られている現象なのです。

この現象は、人に限らず犬や猫をはじめとした多くのペットちゃんでも確認されています。

死が間近に迫ると、脳からドーパミンやセロトニン、オキシトシン、アドレナリンといったホルモン物質が分泌されます。

これらのホルモン物質の作用により、中治り現象が起こると考えられています。

ペットとして飼われるハリネズミにも、同じ現象があったというのは多くの飼い主様から聞かれます。

亡くなったら適切に安置し供養してあげよう

ハリネズミが死んでしまった場合は、きちんと供養できるように以下の手順で安置しましょう。

①死亡確認

ハリネズミは仮死状態になることがあります。

死んでいるのかはっきり確認できない場合は、動物病院で診断してもらいましょう。

②身体を拭いてあげる

これまでの感謝の気持ちを込めて身体をきれいに拭いてあげましょう。

遺体から体液や排泄物が溢れることもあるので、定期的に確認して清潔な状態を保ってあげてください。

③身体を冷やす

棺の中にペットシーツやタオルを敷き、その上に優しく寝かせてあげましょう。

ハンカチなどで包んだ保冷剤やドライアイスを体に添えて冷やし、安置している間はこまめに取り替えます。

夏場ならクーラーを効かせた涼しい部屋、冬場なら暖房のついていない部屋に安置することで遺体の腐敗を遅らせることができます。

Point!

適切に安置すれば夏場で1~2日ほど、冬場で2~3日ほど遺体をきれいに保てます。

この間にペットちゃんの火葬の手配や葬儀を行ってあげてください。

安置方法や供養方法について詳しく知りたい方は下記コラムをご参照ください。

ハリネズミの寿命と長生きしてもらうための5つの秘訣

この章ではハリネズミの寿命と長生きの秘訣をご紹介します。

ハリネズミの寿命

野生のハリネズミの寿命は2~5年、平均で3年と言われています。

対して、ペットとして飼われているハリネズミの寿命は3~7年、平均で4年です。

外敵に襲われる心配もなく、安定して食事をとれる環境がペットのハリネズミの寿命を伸ばしていると考えられます。

中には10年もの長生きをしたハリネズミもいます。

健康や飼育環境に気を付ければ、愛するペットちゃんとより長く一緒にいられる可能性が高くなるのです。

それでも人の寿命と比べるととても短く、ハリネズミと共に過ごせる時間は特別で尊いものだと実感できるのではないでしょうか。

長生きのための5つの秘訣

健康の基本は人と同様、バランスの良い食事適度な運動ストレスのない環境です。

それに加えて、長生きのためには毎日の健康チェック定期的な健康診断がとても大切です。

●バランスの良い食事

ハリネズミに必要な栄養素がバランス良く配合されている専用フードを主食にしましょう。

副食やおやつとしてコオロギやミルワーム、野菜、果物、鶏肉などを与えます。

ペットちゃんの好みや食べる量をよく観察して、与える量を調節してください。

飲み水は、常に新鮮なものに交換してください。

食事量の目安主食:大さじ1~2杯  副食:小さじ1~2杯  おやつ:少量
食事回数成長期:朝・夜の2回  大人:夜1回
食べてはいけない物牛乳、チョコレート、ネギ類、アーモンド、ブドウ など

●適度な運動

野生のハリネズミは一晩に3~5㎞もの距離を歩き回ることもあるため、飼育下では運動不足への対策が必要です。

運動不足解消のための工夫例
  • ケージ内に回し車を設置する
  • ケージ内におやつを隠して探させる
  • 生きたミルワームやコオロギを与えて捕まえさせる
  • 飼い主様が見守る中で部屋んぽ(部屋の中を散歩)をさせる など

●ストレスを溜めさせない

ハリネズミは非常に神経質な動物なので、飼育環境は徹底して管理しましょう。

クーラーやヒーターなどを利用して、ケージ内を適切な温度・湿度に保ち、大きな音や強い臭いがするような場所は避けてください。

夜行性のため、昼間は薄暗くして静かに過ごさせてあげましょう。

警戒心が強いので、最初から過度なスキンシップをすることは厳禁です。

まずは、飼い主様の臭いがついた服などをケージに入れて2~3日様子を見ることから始め、ゆっくりと慣らしてあげましょう。

ストレス対策例
  • 生態や性質に合わせた環境を整える
  • 適度な距離間で接する など

●毎日の健康チェック

体調の異変にいち早く気付けるように、毎日の健康チェックは欠かせません。

また、ダニ症予防のため2週間ごとを目安に、36度ほどのお湯で足湯をしたり、濡れタオルなどで体を拭いてあげましょう。

健康チェック例
  • 体重や食事量の変化
  • 皮膚や針、爪に異常はないか
  • 排泄物(ストレスや消化不良で便が緑色になる)の確認 など

●定期健診

病気やケガの早期発見、早期治療のために半年に1度を目安に健康診断を受けましょう。

かかりつけ医の選び方
  • 通いやすい距離にある
  • ハリネズミを専門に診てくれる獣医師がいる
  • 衛生管理が行き届いている
  • 医療設備が新しい
  • 信頼できる/相談しやすい

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まとめ

大切なペットちゃんと少しでも長く過ごせるように、日々健康管理をしてあげることは飼い主様の務めです。

筆者は幼少期から犬や猫を飼っていますが、平均寿命よりも早くこの世を去った子もいれば、大往生だった子もいます。

すぐに異変に気付けて、手遅れにならずに済んだ子もいました。

ペットちゃんごとに体質も性格も全然違うので、その子に合ったお世話がとても大切だと実感しています。

ハリネズミの場合、本当に死んでしまったか判断できないときや、なぜ死んでしまったかわからず悲しいときもあるでしょう。

そんなときは獣医師に診てもらうことで納得でき、心が救われることもあるので、頼れる動物病院は必ず見付けておいてください。

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ペットちゃんが安らかに眠れるよう旅立ちの準備をいたしましょう。

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