移動式火葬車を使いペットの葬儀を行っている業者は数多く存在し、ペットを火葬する手段としては比較的メジャーなものとして認識されている方も多いのではないでしょうか。しかし、移動式火葬車について調べるとトラブルの事例も散見されますので、移動式火葬車って本当に大丈夫なの?と不安になる方もいらっしゃるかと思います。
当コラムでは、移動式火葬車の特徴や、移動式火葬車での葬儀のデメリット、どのような方におすすめかをご紹介します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
ペット火葬について
まずはじめに、ペット火葬について簡単にご説明します。ペット火葬とは、亡くなったペットちゃんを火葬し、天国へお見送りする葬儀方法のことです。自治体や民間業者に依頼することでペットちゃんの火葬ができます。また、“ペットは家族”という認識が普及した現代において、民間のペット火葬業者は増加しています。
民間企業のペット火葬は大きく分けて2種類の形式があります。葬儀場に遺体を持ち込み建物の中で火葬する形式と、ご自宅までペットを引き取りに来てくれてご自宅近くで火葬車を使用し火葬する形式の2種類です。
このコラムでは、2つ目のご自宅までペットを引き取りに来てくれる出張訪問形式のペット火葬で使用される火葬車についてご紹介します。
移動式火葬車の特徴
出張訪問形式のペット葬儀では、主に移動式火葬車が使用されます。この章では移動式火葬車の基本的な仕組みをご紹介します。
※全ての火葬車が同じ仕組みとは限りません。
基本の造りや外観
車体の後部に火葬炉が備え付けてあり、その中に火葬台が格納されています。トランクを開けると火葬台を出すことができ、火葬をする際は火葬台にペットちゃんのご遺体を寝かせて火葬炉に納めて葬儀を行います。
備え付けの火葬炉ですが、発電機を電源として使用するため十分な火力を備えており、生前ペットちゃんが好きだったおやつ、着ていたお洋服、お花なども一緒に火葬することができます。火葬車の外観は無地で社名などが貼られていないことが多く、悪目立ちしないのも特徴です。
火力の操作は?
車内の操作盤を操作することで火力を調整することができます。火葬中も小窓から火葬炉の状態を見ることができ、スタッフはそれに合わせて火力を調整します。微調整ができる性能の良い火葬車であれば、小さなペットちゃんでも綺麗に遺骨が残せます。
排煙は?
車の上部には煙突がついており、火葬中はそこから排熱と排煙をします。性能の良い火葬車であれば、煙や有害物質はほとんど出ず、目にも見えないため、住宅街でも比較的安心・安全に火葬ができます。なぜこのように煙や臭いが抑えられるかというと、火葬炉の中で遺体を燃やして出た煙や臭いにも高温の炎を当てることで無臭化・無害化しているためです。ですので、煙突から排出されるのはほとんどが水蒸気となっています。
※高温の排熱があるため、電信柱などの真下ですと安全に火葬できない場合があります。
移動式火葬車での葬儀のデメリット
便利な移動式火葬車ですが、もちろんデメリットもございます。この章では、移動式火葬車を利用した葬儀のデメリットや弱みをご紹介します。
天候の影響がある
移動式火葬車での葬儀は屋外で行われ、ペットちゃんの種類によっては火葬の際に1時間近く時間がかかることもありますので、風の強い日や極端に暑い日、寒い日は少なからず身体的負担を感じる可能性があります。ただ、時間がかかる場合は自宅で待機していただくことも可能ですので、立ったまま待機するといったことはほとんどありませんのでご安心ください。
大型のペットちゃんは対応できない
火葬車の性能によっては、大型のペットちゃんを火葬することができない場合があります。ほとんどの業者がホームページなどに対応している種類や重さを記載していますので、事前に何kgまで対応できるかどうかを確認しておきましょう。
人目が気になる場合もある
車体自体は目立たないデザインのものが多いですが、火葬炉や火葬台は珍しいものですので、周囲の人から注目を浴びる可能性があります。また、安全な葬儀のために数十分以上停車することになりますので、早朝・深夜の火葬ですと不審車両として怪しまれてしまうことがあります。
納骨・埋葬は別で行う必要がある
移動式火葬車では火葬しかできないため、その場で納骨や埋葬を行うことはできません。もし、納骨や埋葬を検討されている場合は、火葬を依頼する際に業者に相談してみましょう。業者によっては納骨堂や墓地と提携していることもありますので、火葬とあわせて依頼できます。
移動式火葬車=悪!?
悲しいことに、ペット火葬業者には悪徳業者も潜んでいます。特に移動式火葬車を利用した火葬業者は近隣トラブルの事例も多く、移動式火葬車そのものに悪いイメージを持つ方もいらっしゃいます。この章では、移動式火葬車で起こるトラブルの例をいくつかご紹介します。
煙や臭い・有害物質の排出
旧式の火葬車でよくあるトラブルが煙や臭い、灰、有害物質を排出するトラブルです。煙や有害物質を大量に排出すると、周囲の方が不快に思われるのも当然です。もし住宅街にお住いの場合は、少し離れた開けた場所での葬儀がおすすめです。
このようなトラブルを回避するためにも、火葬を依頼する時や事前相談で火葬車の性能について聞いておくと良いでしょう。ただし、高性能な火葬車でも100%煙や臭いが出ないとは言い切れませんので、ご近所トラブルを絶対に避けたい場合は火葬車での葬儀は選択肢から外したほうが無難でしょう。
火力調整ができない
細かく火力の調整ができない火葬車だと、必要以上に強い火力で遺骨が焦げたり、逆に火力が足りずに遺体が生焼けになるなどの悲しいトラブルが起こります。特に遺骨の損傷は取り返しのつかないことですので、こちらも依頼する時や事前相談の段階で火葬車の性能について質問しておくと安心して葬儀を任せられます。
悪徳業者だった
そもそも悪徳業者だったパターンです。火葬途中に追加料金を請求し支払いに応じなければ途中で火葬を止めると脅したり、遺骨・ご遺体の不法投棄など、ペットちゃんや飼い主様の気持ちを踏みにじるような行為をします。これは火葬車以前の問題ですが、移動式火葬車を導入するだけで開業できてしまう出張ペット火葬は、その手軽さから悪徳業者に目をつけられやすく被害が後を絶ちません。口コミを見たり、実際に問い合わせをして悪徳業者かどうかを見極めましょう。
訪問火葬はこんな方におすすめ
これまで、移動式火葬車の仕組みや弱みについてご紹介してきました。続いて、この章では、どのような方に訪問火葬という葬儀方法が向いているのかをメリットとあわせてご紹介します。
移動の負担が少ない
訪問火葬の最大の特徴は自宅の近くまで来てくれることです。そのため、飼い主様やそのご家族の移動の負担が少ないことが最大のメリットといえます。
高齢の方やお体が不自由な方、葬儀場への移動手段が無い方にも安心してご利用いただける火葬のスタイルです。
また、お忙しいご家族がいらっしゃる場合も移動時間が不要な訪問火葬がおすすめできます。ご家族が揃うタイミングで訪問し、葬儀を執り行うため後悔の無いお見送りができます。
思い出の場所で見送りたい
ペットちゃんとの思い出の場所やその周辺でお見送りをしてあげたい気持ちが強い飼い主様にもおすすめです。移動できるという特徴を活かし、飼い主様の希望に可能な限り応えられるのも移動式火葬車を使用した訪問火葬の強みです。
まとめ
移動式火葬車は日々進化を遂げており、煙や臭いはほとんどありません。そのため移動式火葬車での葬儀を検討される方は増えています。しかし、移動式火葬車に対して悪いイメージを持つ方や近くで火葬が行われていること自体を不快に思う方も当然いらっしゃいます。出張形式の火葬の利便性や性能も加味して、飼い主様にとって後悔のない葬儀ができることを祈っています。
少しでも参考になりますと幸いです。