ペットちゃんを土葬しようと考えている方は「本当に土に還るのか」と心配になる方も多いはず。
大切なペットちゃんを供養するのですから、確実な方法を選びたいと思うのは当然です。
結論を言えば、正しい方法・場所で行えば土葬は有効な供養の選択肢になります。
ただし、動物の種類や大きさによって、遺体が土に還るまでの期間が異なることを理解しておく必要があります。
例えば、インコやハムスターなどの小動物でも完全に土に還るには10年程度かかることがあり、適切な準備や環境が整っていないと、腐敗や悪臭の原因になることもあります。こうした知識が不足していると、「もっと丁寧に供養してあげればよかった」と後悔する結果になるかもしれません。
後から悔やまないように、まずは大切なペットちゃんを丁寧に送り出せるように正しい知識を身につけて、愛するペットの土葬を検討しましょう。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
土葬した遺体はちゃんと土に還る?違法にならない場所は?
ペットちゃんの遺体をそのまま埋葬する「土葬」は、場所を選んで行えば違法ではありません。
具体的には「私有地や許可を得た場所」「川・湖から離れた場所」でのみ行えます。
知らずに行うと後々トラブルになる可能性もあります。
土葬できる条件と土葬に適した場所をしっかりと確認しておきましょう。
土葬の条件は「法律順守」
土葬は「私有地や許可を得た場所」「川・湖から離れた場所」でのみ行えます。
土葬をする際に気を付けなければいけないのは法律に違反しないことです。
飼い主様にとっては愛するペットちゃんの遺体でも、法律上は「一般廃棄物」に区分されます。
そのため、私有地以外の場所に埋葬すると「不法投棄」とみなされ処罰されるのです。
加えて、私有地内だとしても川や湖などの近くに埋葬することは刑法で禁止されています。
ペットちゃんの遺体を水辺に埋めることで、遺体から感染症を引き起こすウイルスが発生するなどし、それらの有害物質が水に溶けて水源を汚染する可能性があることが理由です。
*参考サイト
明示四十年法律第四十五号 刑法(第二編 罪、第十五章 飲料水に関する罪)
土葬に適した場所
土葬に最適なのは「私有地」「水源から遠い」「近隣住宅と距離がある」の3つが揃っている場所です。
一緒に遊んだ公園や河原など思い出の場所に土葬したいと考える方もいらっしゃいますが、法令違反となるので注意が必要です。
また、飼い主様にとっては大切なペットちゃんでも、他の人にとってはただの動物の遺体です。
自分の家の近くに埋葬されることを良く思わない方もいることを覚えておきましょう。
ご近所トラブルを避けるためにも、近隣住宅とはある程度距離を空けて埋葬しましょう。
万が一害虫や悪臭が発生した際に、被害が近隣の家にまで拡散することを防ぐ狙いもあります。
土葬した遺体は数十年ほどかけて土に還る
土葬したペットちゃんの遺体は10年以上の長い期間をかけて土に還ります。
また、分解されるまでの期間はペットちゃんの種類に加えて周囲の状況にも左右されます。
動物名 | 土に還るまでの期間(目安) |
犬(小型)・猫 | 10年以上 |
犬(大型) | 10~30年以上 |
小動物(ハムスター・インコ等) | 10年程度 |
土葬した遺体は土中の微生物や菌によって分解されていきます。
分解のスピードは、土の湿度、土に含まれている酸素の量、周囲の温度などによって異なります。
基本的には掘り返さずにそっとしておく必要がありますが、動物が掘り起こしていないか、虫がわいていないかなど、異常が起こってないか定期的に様子を見る必要があります。
土葬する場所に加えて、継続して管理できるかどうかも考えておくようにしましょう。
土葬のメリットとデメリットを把握しておこう
後々「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、ペットちゃんの遺体を土葬するメリットとデメリットをしっかりと把握しておきましょう。
ペットちゃんの遺体を土葬するメリット
ペットちゃんの存在を身近に感じられる
いつでもお墓参りでき、ペットちゃんの存在を近くに感じられることが飼い主様にとって一番のメリットです。
ペットちゃんが旅立って寂しく感じても「お庭で眠っている」と考えれば気持ちが楽になるかもしれません。
そのため、ペットちゃんとのお別れが寂しい方は土葬を検討してみることをおすすめします。
お庭など身近な場所に埋葬すれば、お参りも毎日することができます。
費用がほとんどかからない
ペット火葬業者やペット霊園に依頼すると、火葬費用、納骨料、お墓の年間管理費などがかかります。
しかし、土葬の場合は、管理に費用が掛かりません。
また、土葬の場合は穴を掘るなどの手間が掛かりますが、準備物は少なくて済むので費用はほとんどかかりません。
体重5kg未満の小型犬を見送る場合を想定して、比較してみましょう。
土葬 | 霊園 (一任個別火葬) | 納骨堂 (個別タイプ) | |
初期費用 | 5,000~10,000円 | 20,000~25,000円 | 15,000~30,000円 |
維持費用 | 5,000円 (お庭の手入れ代) | 10,000~15,000円 (年間) | 10,000円 (年間) |
管理 | 自分で行う | 任せられる | 任せられる |
土葬を行う場合は霊園・納骨堂と比較して費用を削減できます。
しかし、管理は自力で行う必要があるなど、デメリットも存在します。
ペットちゃんの遺体を土葬するデメリット
引越しや土地の売却が気軽に行えなくなる
ペットちゃんの大きさにもよりますが、小動物でも土に還るまで10年程度、犬や猫などの大きな動物なら数十年とさらに長い時間がかかります。
それまでの長い月日を過ごす中で不測の事態で引越しや土地を手放す必要性が出てくる可能性は否定できません。
ペットちゃんを土葬した土地を手放す場合は、トラブル防止のために「土葬を行ったことを買主に伝える」「別の供養方法を考える」などの対策を行う必要があります。
掘り起こすこともできますが、大好きなペットちゃんの変わり果てた姿を目にするのは飼い主様にとっては酷なことでしょう。
害虫や悪臭が発生しないように管理する必要がある
ペットちゃんの遺体を土葬する際には害虫や悪臭に注意する必要があります。
遺体が朽ちて土に還る過程では、強烈な臭いが発生します。
土葬方法に不備があると、その臭気が漏れ害虫を呼び寄せてしまいます。
筆者は「ある日突然、実家内に原因不明の悪臭が漂うようになり、害虫が大量に侵入してきた」という恐ろしい経験をしたことがあります。
父が調査したところイタチが床下で亡くなっていたことが原因だと判明しました。
強烈な悪臭やひっきりなしに出現する害虫による精神的苦痛は非常に大きく、また仮に原因が見付からず被害が拡大していたらと考えるとぞっとします。
悪臭は周辺の方々にも悪影響を与えるため、十分に注意しましょう。
野生動物にも注意が必要
動物の嗅覚は人間と比べ圧倒的に優れています。
そのため、微かな臭いに反応した野生動物にペットちゃんの遺体を掘り起こされることもあります。
特に野良猫やイタチは穴を掘るなど庭や花壇を荒らすこともあります。
一度味を占めた動物は周囲のお庭を荒らしたり、被害を広げることもあります。
そのため、そもそも侵入させないように対策することが大切です。
ペットちゃんを土葬する時の準備物と正しい手順
この章では実際にペットちゃんの遺体を土葬する方法をご紹介します。
ペットちゃんの体が納まるサイズの穴を掘るのは重労働です。
しっかりと準備をすることをおすすめします。
土葬の手順
①土葬の準備をする
まずは必要な品物を準備します。
それと並行して、土葬する場所を選びます。
「日当たり・風通しが良い」「水はけが良い」場所を選ぶのが理想です。
または「ペットちゃんを身近に感じられる場所」を選ぶのもおすすめ。
玄関や窓から見える場所、なおかつ生活の妨げにならない位置を選んであげましょう。
②穴を掘る
スコップなどを使って、深さ1~2mほどの穴を掘ります。
穴を掘って遺体を納めるまでにかかる時間は、短くても半日程度が目安です。
土の状態や土葬するペットちゃんの体の大きさにも左右されますが、十分な深さの穴を掘るのは重労働です。
そのため、十分に時間を確保できる日に始めるのが理想です。
穴を掘り終わったら木炭やダンボール、石灰など腐食しやすいものを穴の底に敷きます。
③布で遺体を包む
木綿などの自然素材100%の布で遺体を包みます。
先ほど敷いた腐食しやすい物の上に、布で包んだペットちゃんの遺体を優しく寝かせてあげます。
④土を戻す
ペットちゃんに感謝の気持ちを込めながら、土を戻します。
遺体が土に還った際、地中に空間ができて陥没するので、土は30㎝ほど盛るようにします。
⑤目印(墓標)を置く
ペットちゃんを埋めた場所がわかるように、また万が一掘り起こすことになった場合のためにも、必ず石などの目印(墓標)を置きます。
ペットちゃんを土葬する際の注意点と対策
ペットちゃんの安らかな眠りのためにも、土葬を行う際に注意して欲しいことがあります。
対策も一緒にお伝えしますので、ぜひご確認ください。
ペットちゃんの遺体が土に還るまでは数十年かかる
遺体が土に還るまではハムスターやインコなど体の小さなペットちゃんでも数年、犬や猫なら数十年程度かかります。
言い換えれば、その長い年月ペットちゃんのお墓を管理していく必要があるとも言えます。
お参りと一緒に「臭いが発生してないか」など異常がないか見ておくようにしましょう。
近隣トラブルを未然に防げるように、対策が必須
悪臭や害虫が発生すると近隣へ被害が拡大する恐れがあります。
また、臭いを嗅ぎつけた野良猫や野生動物が近隣のお家に迷惑を掛けることも考えられます。
また、ペットちゃんが生前、投薬治療を受けていた場合、化学物質が地中に溶け出し、近隣の畑や植木に悪影響が出ることもあります。
特に悪臭や害虫など、周囲の方々に被害を及ぼす可能性があるトラブルには要注意です。
遺体をそのまま埋めるのではなく、お骨の状態で土葬することでトラブルを防げることもあります。
土葬以外の供養方法を紹介!納得の供養方法を見付けよう
土葬のやり方や注意点、デメリットなどを詳しく知ったことで、「土葬は現実的に難しいかも」という結論に至った方もおられるのではないでしょうか。
そこで、ここでは土葬以外の供養方法をご紹介します。
プランター葬を行う
庭がないご自宅の場合、プランターに埋葬して供養するプランター葬も人気です。
好きな花を植えれば、日々ペットちゃんを思いながらお世話することができます。
土葬と違って場所を選ばず、必要な場合は移動できるメリットがあります。
特にハムスターや文鳥など、小動物の供養におすすめの方法です。
プランター葬なら水源・土壌汚染などの心配はありませんが、害虫や異臭には注意が必要です。
プランターは部屋に置くこともできるため、特に注意しましょう。
また、湿度によってはプランター内にカビが生えることがあります。
このようなトラブルに気付き、適切に手入れをする必要があることも覚えておきましょう。
ご興味がある方は、プランター葬のやり方を解説した記事もご参照ください。
自治体に引き取ってもらう
自治体に依頼し、ペットちゃんの遺体を引き取ってもらうこともできます。
自治体に依頼した場合、火葬業者に依頼するよりも安価に済むメリットがあります。
例として東京都世田谷区では25kg未満の動物の遺体を3,100円で引き取ってくれます。
25kgというと中型犬程度のため、多くの種類のペットちゃんを安価で火葬できます。
しかし、ほとんどの自治体では「一般廃棄物」としてゴミと一緒に焼却後、埋め立てられるため、遺骨を残すことはできません。
※参考サイト
「ペットが亡くなったら・飼い主不明の動物死体を発見したら」世田谷区
専門業者に依頼する
「きちんと葬儀をしたい」など、供養に関する要望があれば専門業者に相談しましょう。
火葬業者であれば火葬に加えて、読経やメモリアルグッズの作成などのオプションを付けられます。
土葬・プランター葬をする場合でも、火葬してお骨にすることでトラブルを防げます。
そのため、自分での作業に不安がある場合は専門知識を持った方に相談できると安心です。
特に、ペットちゃんを悔いなく見送りたい場合は、供養方法も含めて相談してみるのがおすすめです。
話してみることで気持ちが整理できるうえ、もっと適した供養方法が見つかるかもしれません。
まとめ
ペットちゃんの遺体を土葬すること自体は法律上問題ありません。
しかし、場所や方法によっては近隣に迷惑をかけたり、法律に違反してしまったりする恐れもあるため、充分に注意を払って適切に行わなくてはいけません。
土葬のメリット・デメリットを把握したうえで他の供養方法との比較なども行い、愛するペットちゃんと飼い主様にとって最善の供養方法を選択してください。