プランター葬とは、プランターに土を入れてペットちゃんの遺体を埋葬し、自然に還す供養方法のことです。
今回はプランター葬の正しいやり方やメリット・デメリット、注意点を解説し、おすすめの花についてもご紹介します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
プランター葬のために必要な品と、正しいやり方を解説
愛するペットちゃんをしっかりと弔うためにも、必要なものを揃えて正しい手順で埋葬しましょう。
プランター葬に必要なもの
①最低30㎝以上の深さがあるプランター
プラスチック製のものは2、3年で壊れてしまう可能性があるため、陶磁器製のものを用意します。
ペットちゃんの体の大きさに合わせ、できるだけ深さのあるプランターを選びましょう。
②園芸用の土
遺体を少しでも早く土へ還れるようにするためと、植えた花を育てやすくするために必要です。
土は買ってきたものをそのまま使うのではなく、腐葉土を混ぜるのがおすすめです。
腐葉土の中の微生物が、遺体の分解を助けてくれます。
③堆肥
「牛ふん堆肥」などの堆肥は、微生物を活性化する働きがあります。
④鉢底ネット
鉢底ネットには害虫の侵入を防ぐ役割があります。
⑤鉢底石
鉢底石は排水性と通気性を良くし、植物の根腐れを防ぎます。
⑥スコップ・バケツ・軍手
なくても問題ありませんが、あったほうが作業しやすいです。
プランター葬の手順
①土台を作る
プランターの底に鉢底ネットを敷き、底が見えなくなるまで鉢底石を敷き詰めます。
②土を混ぜる
バケツに園芸用の土と腐葉土を入れてスコップで1:1の割合になるように混ぜます。
③土をプランターに入れる
混ぜた土をプランターの底から1/3程度まで入れます。
④ペットちゃんの遺体を置く
まずは堆肥を敷き、その上に腐葉土を敷きます。
次にペットちゃんの遺体を置き、上から腐葉土を被せ、堆肥を被せます。
遺体を腐葉土で包むことによって土に還りやすくなります。
⑤鉢底ネットを敷く
植えた花の根がペットちゃんの遺体を傷つけないよう鉢底ネットを敷きます。
万が一掘り返すことになった時の目印にもなります。
⑥土をかぶせ花を植える
最後に②で混ぜた土を被せて、花の種や苗を植えて完成です。
プランター葬をする前にメリット・デメリットを知ろう
プランター葬はお家の種類を問わず手軽にできるため人気ですが、もちろんデメリットもあります。
自分の生活スタイルに合っているか、管理はできるかなど、デメリットも加味して実施するかを検討してください。
プランター葬のメリット
- 葬儀費用が抑えられる
- ペットちゃんを身近に感じられる
- 庭がなくてもできる
- 賃貸住まいでもできる
- 引越しなどの際にも持ち運びができる
プランター葬のデメリット
- 鳥や猫などに掘り起こされるリスクがある
- 異臭が発生する恐れがある
- コバエなどの虫が湧く可能性がある
- 異臭・害虫の発生により近隣トラブルになることがある
- 毎日の花の世話が必要
- 遺体が土に還るまで10年ほどは管理が必要
供養方法は家族で話し合って決めましょう
近年では、ペットちゃんの葬送方法としては「火葬」がスタンダードになってきています。
シェアリングテクノロジー株式会社の調査によると飼い主様が選ぶペットの葬送方法は「火葬(83%)」「土葬(17%)」です。
理由は、人と同じように葬送したい、埋葬時の異臭・害虫トラブルを避けたい、などです。
もちろんペットちゃんの供養に、どの方法が正しいということはありません。
ご家族皆で話し合いをして、納得の行く方法で大切なペットちゃんを供養してあげましょう。
*参考サイト
【あなたはペットとお墓に入りますか?令和時代のペット供養はどのように行われるべきか調査】シェアリングテクノロジー株式会社:2021年
プランター葬は、火葬業者に依頼して火葬後に行うのがおすすめ
ペット火葬業者なら火葬車で自宅まで迎えに来てくれて、火葬後は返骨してくれるのでプランター葬には最適です。
火葬を依頼する際は返骨の有無を確認する
ペットちゃんの火葬は、ペット火葬業者以外にも自治体やペット霊園に頼めば可能です。
しかし、自治体の場合は返骨に対応していないところがほとんどです。
ペット霊園では、ペットちゃんの遺体を持ち込み、遺骨を持ち帰る必要があるため運搬手段がない人には難しいでしょう。
ペット火葬業者へ依頼する場合でも、遺骨の返骨が可能かどうかは事前に確認してください。
火葬車の性能によっては、小型のペットちゃんの遺骨を残せないことがあるからです。
ペット火葬業者に依頼する場合の費用や注意点については、下記コラムにて詳しくご紹介しています。
他にもわからないことやご要望がある場合は、業者に連絡して確認するのがおすすめです。
プランター葬に向いている生き物と、よくあるトラブルの対策
プランター葬を行う際に気をつけるべきことを解説します。
プランター葬に向いているのは小型の生き物
プランター葬に向いているのは、小鳥・ハムスター・金魚・昆虫などの小さな生き物です。
犬や猫などの大きな動物の場合、プランターでは深さが足りず土に還るまでに相当な時間がかかるため不向きです。
また、異臭や害虫を防ぐためにペットちゃんを正しい手順で埋葬するのはもちろん、その後のプランターの管理も大切です。
日当たりのいい場所、風通しのいい場所に置き、異臭や害虫が発生していないか定期的な確認をしましょう。
*異臭は遺体が腐敗することで発生し、害虫はその臭いに寄ってきます。
完全に異臭・害虫の発生を防ぎたいのであれば、火葬して遺骨にしてから埋葬しましょう。
最低でも土に還るまでの約10年は管理する
ペットちゃんの大きさにもよりますが、土に還るまでには10年ほどかかると言われています。
少なくともその期間はプランターを管理しなくてはいけません。
風などでプランターが倒れないように、また他の動物や小さなお子様が掘り起こさないように十分注意しましょう。
また、お花の種類に応じて正しい方法でお世話することも大切です。
プランターの花に水をやらないのもいけませんが、やりすぎるのもカビや臭いの原因になります。
季節や時間帯、花の種類に合わせて適量の水を与えましょう。
受け皿に溜まった水はこまめに捨てることで、水中に虫が湧いたり、悪臭が発生したりするのを防げます。
プランター葬におすすめの花は手入れがしやすい一年草
プランターに植える花は自由に選べますが、一年草で手入れがしやすい品種がおすすめです。
寿命が長い多年草は根を張り巡らせてペットちゃんの遺体を傷付けてしまうことがあるからです。
一年草は1シーズンで枯れてしまいますが、種を収穫して再び植えれば次のシーズンにまた花を咲かせてくれます。
まずどの花にするか決め、次にペットちゃんに似合う色や花言葉の意味などから最適な品種を選んであげると良いでしょう。
一年草で手入れがしやすい品種例
・デイジー
初心者でも育てやすく開花期が長いのが特徴です。
多くの品種があり、花の色や形、大きさも様々ですのでお好みのものを探してください。
草丈:15~40㎝
開花期:12月下旬~5月上旬(種から育てた場合は3月から開花)
・コスモス
とても丈夫で、日当たりと風通しが良い場所であれば土質を問わず育ってくれます。
近年では日の長さに影響されず開花する早世品種が多く出回るようになったため、春に種を撒けば夏から開花を楽しめます。
草丈:50~120㎝
開花期:6月~11月
・アサガオ
小学校の授業で栽培されるくらいアサガオは育てやすい植物です。
朝夕の水やりさえ忘れなければ栽培に失敗することはほとんどないと言われています。
つる性で長く伸びるのが一般的ですが、中にはつるが伸びない品種もあります。
草丈:20㎝~6m
開花期:7月中旬~10月上旬
・パンジー
パンジーは育てやすいことに加え、花の少ない寒い時期に咲いてくれるのが特徴です。
丸く色鮮やかな花びらで、品種によっては珍しい色味を楽しむこともできます。
草丈:10~30㎝
開花期:10月下旬~5月中旬
花のお手入れ方法
ペットちゃんにご飯をあげ、ブラッシングをして、一緒に遊んでいた時のように、プランターの花をお手入れしてあげましょう。
・お花に合った方法でお手入れをする
正しいお手入れをすれば、長く花を楽しめ、植物の寿命も延ばすことができます。
例えば、デイジー、コスモスは土の表面が乾いたら、プランターの底から水が流れ出るくらいたっぷりの水をあげる。
アサガオの場合は水のやり方は同じですが夏場には朝夕の水やりが必要など、花の種類に応じてお手入れをしましょう。
埋葬したプランターにきれいな花が咲けば、ペットちゃんも喜んでくれるはずです。
また、しおれ始めた花を摘み取る「花がら摘み」も大切です。
定期的に行えば見た目が良くなるうえに、新しい花が育ちやすくなり、植物の寿命を延ばすことにもつながります。
プランター葬を行う意味は?
筆者が飼い犬を亡くした後、一番寂しかったのは毎日愛犬とともに過ごしていた習慣がなくなってしまったことです。
愛犬中心の日々から自分だけの日常に戻すには時間がかかり、様々な場面で愛犬がもういないことを実感させられました。
プランター葬は、筆者と同様にペットちゃんと濃密な時間を過ごしてこられた方にこそ向いている供養方法だと思います。
元気に花を咲かせられるようお手入れすれば、旅立ったペットちゃんの代わりに美しい花が生活に彩りを添えてくれます。
また、ペットちゃんのイメージに応じて花を選ぶことも、気持ちの整理に役立ちます。
まとめ
プランター葬はペットちゃんを身近に感じることができる一方で、きちんと管理をしていなければ異臭や害虫が発生するリスクもあります。
トラブルになるのが心配という方は、遺骨にしてから埋葬するのがおすすめです。
小型のペットちゃん向きのプランター葬ですが、火葬して遺骨にすれば体の大きな動物でも行えます。
その場合は、遺骨を数個選び粉骨してから埋葬しましょう。