近年はペットちゃんも人と同じように、火葬してから供養してもらうケースも増えていますが、「ずっと近くにいてあげたい」という気持ちからご自宅での埋葬を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、ペットちゃんの埋葬方法や注意点などご紹介していきます。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
そもそもペットの埋葬とは
ペットの埋葬とは、ご自宅の庭などにペットちゃんを埋めて供養することをいいます。さらに、埋葬の方法にはペットちゃんの遺体をそのまま埋める「土葬」と火葬後の遺骨を埋める「納骨」があります。
土葬と納骨の違い
どちらもペットちゃんの遺体を土に還す方法ですが、以下の2点の違いがあります。
・土葬の場合は遺体が腐敗する臭いや害虫の発生に注意する必要がある
・火葬は業者に依頼する必要があるため、納骨の方が費用が掛かる
まとめると、費用を削減できる代わりに悪臭・害虫対策を行う必要があって手間が掛かるのが「土葬」、費用が掛かる代わりに安全に埋葬できるのが「納骨」となります。
ペットを埋葬できる場所
埋葬場所を決める際は以下の3点に注意して選んでください。
埋葬する場合の注意点
ペットちゃんの遺体は人と違い、「一般廃棄物」に分類されるため「廃棄物処理法」という法律に従わなければいけません。
廃棄物であるペットちゃんの遺体を私有地以外の場所に埋葬することは、廃棄物処理法の第十六条「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」に抵触して罰則の対象になります。
※参考サイト
埋葬場所の決め方
「廃棄物処理法」によって、他人の土地はもちろん、公共の場所や川・山に遺体を埋葬することはできません。埋葬できる場所はご自身で所有している土地や私有地に限られます。
そのうえでカビや害虫の発生を抑え、ペットちゃんを身近に感じられるように「水はけが良い」「日当たりが良い」「生活をするうえで目に入りやすい位置」「通行や生活の邪魔にならない」といった条件にできるだけ多く当てはまる場所を選んでみましょう。
掘り返す場合も検討する
埋葬場所が悪く周辺の方に悪臭や害虫の被害が発生している場合はトラブルを避けるために移動させる必要があり、将来土地を手放して引っ越す場合はペットちゃんを置いてけぼりにするのは可愛そうです。
このように、場合によっては掘り起こさなければいけない場合もあることを覚えておきましょう。
ペットの埋葬方法
ここでは犬をお庭に埋葬する場合を例に、法律と周囲の方々に配慮した埋葬方法を紹介します。
土葬による埋葬方法
①深い穴を掘る
異臭を防いで野生動物に掘り返されることを防ぐため、およそ1m~2mほどの深さの穴を掘ります。横幅はそれほど広くなくても問題ありませんが、ペットちゃんが余裕を持って横たわれるくらいのサイズはほしいです。
・穴掘りは余裕を持って
筆者は実家の花壇づくりを手伝うためにおよそ70×70程度の区画の穴掘りをしたことがありますが、土が予想以上に硬くてスコップが壊れてしまうなど様々なアクシデントに見舞われて、予想以上に時間がかかってしまいました。
体のサイズが大きい子はその分穴を掘る労力がかかるうえ、庭の土の状態によっては予想以上に穴掘りに手間取る可能性があることを覚えておきましょう。
②穴の底に腐食しやすいものを敷く
ペットちゃんがきちんと土に還れるように、腐食しやすいものを敷いてあげましょう。腐食しにくいものはペットちゃんが土に還るのを遅らせるだけでなく、地下水の汚染などのリスクもありますので入れないようにしてください。
・腐食しやすいもの
ダンボール・石炭・木など
・腐食しにくいもの
ガラス・缶・ 首輪、ボールなどプラスチックの品
③遺体を寝かせる
木綿や絹など自然素材100%などの土に還りやすい素材のタオルで、ペットちゃんを優しく包んであげましょう。そして、先程敷いたものの上に寝かせてあげてください。このとき、ペットちゃんに土がかかってしまいそうであれば、上からもう一枚タオルをかけてかからないようにしてあげましょう。
④土を戻す
ペットちゃんに感謝の気持ちを込めながら、土をもどしていきましょう。穴には隙間ができているので、日が経つにつれてへこんでしまいます。土を戻す際は30㎝以上の山ができるように高くしておきましょう。
⑤目印のものを置く
ペットちゃんが埋葬されている場所がわかるように、石や板などを置いて目印を置きましょう。目印があるとその場所で手を合わることができるだけでなく、仮に引っ越しするとなった際にもすぐに分かります。いつまでもペットちゃんを感じられるように、お花や木などを記念に埋めるのもいいですね。
納骨による埋葬方法
①30㎝くらいの穴を掘る
ペットちゃんの遺骨の大きさにもよりますが、遺骨の場合は30㎝ほどの深さで問題ありません。
②遺骨を骨壺から出してタオルなどに包む
骨壺から出して、木綿や絹など自然素材のタオルや紙などに遺骨を包む。骨壺に入れたままだと土に還りにくいため、必ず骨壺から出して埋めるようにしましょう。
③穴に遺骨を埋める
タオルなどに包んだ遺骨を穴に埋めます。ペットちゃんに感謝の気持ちを込めながら土をもどしていきます。
④目印になるものを置く
ここがペットちゃんのお墓となります。目印になるものを置いて冥福をお祈りしましょう。土葬の際と同様に、お花や木などを記念に埋めるのもいいですね。
ペットを埋葬する際の注意点
ペットをご自宅の庭などの私有地に埋葬する際は、法律上問題はありません。しかし、ご近所とトラブルになってしまうこともあるので気をつける必要があります。実際にどのようなことに注意しなければいけないのか詳しくご紹介していきます。
リスクを考えておく
大きなペットちゃんをそのまま土葬する際は、土に還るまで30年~40年ほどの長い時間がかかります。還る時間が長いほど、害虫や異臭などのリスクが高いということも考えておかなくてはいけません。
引っ越しなどの予定はないか
将来ご自宅を売却する予定や建て替えなどの予定はないでしょうか?土に還るまで数十年かかります。できる限り眠っているペットちゃんを掘り起こすことのないようにしてあげましょう。
腐食しにくいものは入れない
ペットちゃんが生前つけていた首輪や好きだったおもちゃなど、一緒に入れてあげたい気持ちは分かりますが、腐食しにくいものは土に還らずそのまま残ってしまいますので、避けるようにしましょう。
日当たりが悪い場所を避ける
日当たりが悪い場所だと、ペットちゃんが土に還るまでに時間がかかってしまいます。できるだけ日当たりがいい場所に埋葬するようにしてあげましょう。
有害物質を避ける
ペットちゃんのご遺体から、異臭や他の動物に感染する菌が発生する可能性もあります。他の動物に掘り起こされる恐れがあるなら、穴を深く掘るようにしましょう。また、有害物質を抑える作用がある「石炭」を一緒に埋めることもおすすめです。
将来の供養方法を考えておく
急な生活の変化による引越しなど管理が難しくなった時に備え、近隣のペット霊園の場所を調べるのもおすすめです。
「他の子と一緒に眠らせてあげたい」など、ペットちゃんのためにしてあげたいことを参考に、万が一に備えましょう。
その他の供養方法
これまでペットちゃんの遺体を自宅などに埋葬する方法をご紹介してきました。しかし、様々なご事情がありご自宅に埋葬できない方もいらっしゃると思います。そこでこの章では、その他の供養方法をご紹介していきます。
プランター葬
埋葬できるお庭がない場合はプランターに埋葬するという選択肢もあります。
プランター葬のメリットや方法については、こちらでまとめてありますので、参考にしてみてください。
火葬した遺骨をご自宅で保管
ペット火葬業者によっては遺骨を返却してもらうことが可能な火葬プランもあり、返却してもらった遺骨をそのまま骨壺に入れて保管する飼い主様もいらっしゃいます。保管する際は、徐湿剤を入れるなどカビが生えないように管理しましょう。
ペット火葬業者にて合同火葬・合同埋葬
ペット火葬には、他のペットちゃんと一緒に火葬する「合同火葬」という種類があります。ペット火葬業者によって異なりますが、火葬後そのまま共同墓地などに埋葬できます。他の火葬方法に比べ比較的費用を抑えることが可能です。
ペット専用のお墓を建てる
火葬してもらった遺骨を、ペット専用のお墓に納骨される飼い主様もいらっしゃいます。墓石に名前を刻めるお墓や、人と一緒に入ることができるお墓など最近はお墓の種類も多様化しています。
アクセサリーなどの手元供養
常にペットちゃんを感じることができる、アクセサリーやオブジェなどの手元供養も最近は需要が高まっています。また、狭い部屋でもご自宅に置いておけるお洒落でコンパクトな仏壇などもあります。
まとめ
最愛のペットちゃんとのお別れ。「できればずっと近くにいたい」という気持ちから、ご自宅への埋葬を検討される飼い主様も多いと思います。しかし、マンションや賃貸など様々なご事情からご自宅に埋葬できないケースも少なくありません。
最近は飼い主様のニーズに合わせた供養方法がたくさんありますので、ご自身にあった方法で大切なペットちゃんを供養してあげてください。飼い主様がご納得いく形で供養することが最良の供養になります。